2019 Fiscal Year Annual Research Report
Maruyama Masao and the University of Tokyo Struggle
Project/Area Number |
16K02209
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
清水 靖久 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (00170986)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東大紛争 / 丸山真男 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、戦後日本の政治学者、丸山真男の思想を歴史的に考察すること、そのために1968-69年の東大紛争の実像を解明することをめざしている。東大紛争における丸山の思想については、未解明のことが多い。丸山が1968年11月8日に林健太郎文学部長の軟禁からの解放を求める声明に署名した以外、紛争について発言しなかったのはなぜか、12月23日に全共闘学生が法学部研究室を封鎖したとき、「軍国主義者もしなかった。ナチもしなかった。そんな暴挙だ」と言った意味は何か、1969年1月24日の大学問題シンポジウムでロマン主義的な「概念の解体」を指摘したのは妥当か、2月24日の文学部階段教室で「人生は形式です」と言った意味は何か、日本思想の「原型」から「古層」へと言葉を変えたのは表現の問題に過ぎず、東大紛争による思想の変化ではないというのは本当かなど。 一昨々年度のこの報告では、そのようにいくつかの丸山の「発言」を手がかりとした問いを記し、それ以来おおむね順調に研究を進めてきた。その研究成果を著書として世に問うつもりだったが、科研費の研究成果公開促進費(学術図書)への応募が4年続けて採択されなかった(「十分に市販性があるものと思われる」「既に類似の成果が刊行されている。出版社等の企画によって刊行するものではないかと思われる」「出版予定年度に刊行すべき必要性が低い」「独創性又は先駆性がもう少し高いと良い」との審査所見で)。そこでこの基盤研究(C)の補助事業期間を1年延長し、科研費を著書刊行費に充てることにして、執筆編集出版を進めた。著書『丸山真男と戦後民主主義』は2019年11月に刊行され、十分に市販性がなかったにもかかわらず、類似の成果とは大いに違うこと、予定年度に刊行すべき必要性が低くなかったこと、独創性または先駆性が高いことが認められたのだろう、半年足らずで完売間近になった。
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