2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02213
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
小島 康敬 国際基督教大学, 教養学部, 特任教授 (70101590)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乳井貢 / 礼楽 / 藩政改革 / 聖人の道 / 儒学 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦前に刊行された『乳井貢全集』全四巻は誤植が多く、信頼に値しない。そこで、弘前市立図書館等に所蔵されている自筆本・稿本を底本として、信頼できるテキストを作成することを本研究の課題の一つに掲げた。その課題を遂行すべく、今年度は全集第一巻所収の『志学幼弁』十巻のデータテキスト化に取り組んだ。当該全集は戦前の版であり、旧漢字、特殊な文字、フリガナが多い為に、スキャナーの読み取りに誤りが多く、その修正作業が必要であり、それを推し進めている。と同時に、そのテキストファイルをもとに、弘前市立図書館蔵の筆写本との校合しながら、正確なテキストを作成すべく、入力作業を遂行している。 2016年8月、11月、2017年3月、4月と弘前市立図書館及び青森県史編纂室に出張し、乳井貢の著述の写本類を調査し、写真(デジタル)を撮影した。また、郷土雑誌『うとう』等々を渉猟し、乳井貢に関する論考・記事を調査蒐集した。更には弘前藩の公式日記である『国日記』を調査し、その記事の中から乳井貢に関する記述の抽出作業を一部実施した(この作業は現在進行中であり、今後も丹念に継続してゆく必要がある)。 2016年9月には韓国漢陽大学主宰の国際シンポジウムに招待され、日本儒学と国学についての報告をした。また11月には柳馨遠実学国際シンポジウムに招待され、韓国の経世致用学派の祖である柳馨遠の経世済民策と荻生徂徠、太宰春台、乳井貢、海保青陵の経世済民論を比較し、両者の共通点・相違点について詳細な報告をした。その後、韓国の研究者と儒者の政治参与の問題を巡って、韓国の研究者と学術的な意見を交わした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原本が戦前の出版物であり、また特殊な文字やフリガナが多く、OCRスキャナーで取り込んだ文字のテキストファイル化に想定を超えて時間と手間がかかっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
1 弘前藩宝暦改革における乳井貢の施策の目玉である「標符」発行についての実態の解明とその経済統制が領内にもたらした結果について調査する。 2 乳井の改革に対する反体勢力の乳井批判がどのようなものであったのかについて調査する 3引き続き、『志学幼弁』の校訂作業を推進し、テキストデーターベース化の為の基礎作業を継続してゆく。 3 弘前藩以外の諸藩における藩政改革の実態調査に着手する。
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Causes of Carryover |
スキャナーの読み取りの修正が多く、校訂作業に想定外の時間をついやして入力作業が遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
テキストデータベース化の入力作業を推進するために使用する。
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