2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Emergence of Democratia and Freedom in the Judaism
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16K02221
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
勝又 悦子 同志社大学, 神学部, 教授 (60399045)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自由 / ユダヤ教 / 偶像崇拝 / 民主主義 / 聖書解釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となった2019年度は、本研究の総括の年として、ユダヤ教聖書解釈における「自由」の概念を中心にまとめた。2018年度から継続のテーマであった金の子牛像の事件(出エジプト記32章)に関して、さらに論考を深め、タルグム(アラム語訳聖書)での金の子牛像理解にも分析を広げた。その過程で、ユダヤ教伝統では、「個」としての自由の概念が、金の子牛像事件のために破壊された石板との連想の上もたらされ、その後長きにわたって両者の結合が今なお続くことから、「自由」の対極には、子牛像に代表される偶像崇拝が想定されていること、また両者が必然的に連想される構造になっていることを指摘した。 さらに、研究史を追うプロセスと、またユダヤ学におけるキリスト教像の分析から、19世紀末のドイツ・ユダヤ学において、「自由」「デモクラティア」に対する切迫した希求の念が明らかになった。特に、ドイツ・ユダヤ学を牽引したA.ガイガーが、その置かれた環境-ユダヤ共同体をドイツ国民の一部として、他のドイツ人と平等な市民として確立させる必要性に迫られていたーゆえに、ユダヤ教の自由と自治を強く求めていた姿が明らかになった。こうしたバックグランドが、彼らの言説の中で、実際の伝統的聖書解釈テキストではほとんど有意な意味を持たない用語「デモ(民衆)」へのガイガーの強い関心などにあらわれる。 ドイツユダヤ学のラビ文献へのアプローチの仕方と、実際のテキストの乖離から、「自由」「デモクラティア」の概念が創出されるプロセスが明らかになった。こうした論考を、学会発表、また論文発表としてアウトプットした。また、2018年度の研究会「ユダヤ教の諸相」での研究論文を論集『一神教世界の中のユダヤ教』として編集、出版に寄与した。
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