2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Comparative Study on the Thought of Kompaku(soul and spirit) Outlook in Japan and Asia:Through the Analysis of the Relationship between Disaster and Hitogami(man-god)
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16K02222
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
佐藤 文子 佛教大学, 公私立大学の部局等, 非常勤講師 (80411122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮嶋 純子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (80612621)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 霊魂 / 死者儀礼 / 葬送 / 日本固有論 / アジア文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、東南アジア(ベトナムなど)および北アジア(内モンゴルなど)地域における資史料調査および聞き取り調査等を実施し、期間内の成果を総合的に検討し、これまで研究蓄積がある日本地域のおもに前近代に展開していた魂魄観の様相との比較研究をおこなった。そのさい比較のポイントとしたのは、火葬忌避意識の有無・墓参習慣・尊格呼称忌避・系図有無・殯有無・事故死者儀礼の区別有無・霊舎(廟)祭祀の有無・追善のための寺社参詣習慣の有無などである。 その結果、東アジア間での比較において日本地域の特徴と考えられていた魂魄認識について、類似の特徴が周圏的に看取されることが明らかになった。中国を中心に行われる死者儀礼においては、魂魄の魄の部分についての取り扱い方法が顕著に発達し、生者の主宰による死者の社会的人格の再編成が貫徹されており、なんらかの事情でそこに瑕疵が生じた場合において、とくにべつの手立てがとられる。なんらかの事情とは、寿終死以外の横死・祭主となるはずの子孫の不在である。べつの手立てとは、宗教者に依頼した操作としての供養や死への対処(日本でいう忌みや祓えあるいは鎮)に該当する。 アジア地域では中華社会における魄の取り扱い方法と類似したものが各地に見られるが、日本においてはそこに重大な欠落があり、17世紀以降一部武家社会のみに形式的に用いられるのみで、そこには日本人の魂魄観としての実質がない。東南アジアや北アジアにおいてはむしろ日本地域に近似する状況がみられ、とくに北アジアについては、魄への対処の欠落を前提に、非常用の操作や対処をむしろ通常の回路として使ってきたことを確認した。これは仏教などの来世を想定する彼岸的宗教の受容拡大と連動する可能性がある。 なおこれらの研究成果については既発表のもののほかに2019年度刊行の『シリーズ日本宗教史』・『アジアの死と鎮魂・追善』においても発表される。
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