2017 Fiscal Year Research-status Report
近代初期における学知の方法と論証――メルセンヌからアルノーまで――
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16K02223
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
武田 裕紀 追手門学院大学, 基盤教育機構, 教授 (50351721)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | デカルト |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画では、2年目の後半から、メルセンヌの『学知の真理』とアルノーの『論理学』の両著作に挟まれた時期(1625~1664)における数学・自然学上のさまざまなテキストを題材に、そこに現れた学問的方法論や論証に関する議論のケーススタディを蓄積するとした。この計画に沿って29年度は以下の研究を行った。 1)デカルトの数学・自然学関連の文献を翻訳・注解し、『デカルト数学自然学論集』として刊行した。本書においては、光学(「屈折について」)、磁石論(「キルヒャー『磁石論』抜粋」)、数学(「二項数の立方根の考案」)、学問論(「カルテシウス」)にかんする4つの文献を扱ったが、そのうち特に本課題と関係するものとして「カルテシウス」と「二項数の立方根の考案」がある。後者は、デカルトのみならずスタンピウンというオランダの数学者のテキストを含んでいる。 2)デカルトにおけるディメンジョン概念の研究を行った。これまで空間概念に関する研究は豊富であったが、むしろ「空間を図る」という観点からディメンジョンという用語に焦点をあてて、アリストテレスからニュートンに至るディメンジョン概念の変遷の中で、デカルトの貢献を適切に位置づけることに成功した。また、ディメンジョン概念の整備が、近代的な物理学を切り開くための一つの試金石であったことも示すことができたように思われる。本研究成果は、『理想』699号で論文として掲載された。 なお、本研究を通して、デカルトにおけるマテシスと想像力の関係といった新しい問題が浮上してきたので、今年度はこの問題を課題の一つとしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたデカルトの数学・自然学テキストの翻訳・注解は順調に完了した。また、ディメンジョンに関する研究は、申請段階での研究予定にはなかったが、「デカルトの科学文献翻訳注解及び近世初期における学知の流通に関する多角的研究」(15H03152)に研究分担者として参加する中で、新たに発見したテーマである。この点については、当初想定していた以上の成果であった 他方で、申請時に予定していた「キルヒャー、メルセンヌ、デカルトという個々の学問の方法の相違といった問題を越えて、パリのアカデミーとイエズス会との関係」という課題は、「キルヒャー『磁石論』抜粋」を翻訳する際に取り組んでみたが、予想を超える困難のため、断念せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)申請書に予定したとおり、『学知の真理』(1625)第二、三巻の研究を遂行する。 2)申請時以降に見出したテーマであるディメンジョン概念の問題を、パスカルとノエル神父をテキストに、デカルトの次の時代(1650年代)について研究する。また、デカルトのディメンジョン問題を扱う中で浮上してきた、「デカルトにおける想像力」の問題について論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
ほかの補助金による研究「デカルトの科学文献翻訳注解及び近世初期における学知の流通に関する多角的研究」(基盤研究B)の分担金により予算に余裕があったこと、また学術成果公開促進費による『デカルト数学・自然学論集』の事業完了に迫られていたことにより、次年度使用額が発生した。使用計画としては、海外出張および、国内での小規模な研究会を開催し、国内研究者を招へいすることを予定している。
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Research Products
(2 results)