2016 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の科学的人種主義を基盤とする民衆統治秩序の展開:部落問題の転回と再文脈化
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16K02224
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
関口 寛 四国大学, 経営情報学部, 准教授 (20323909)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生政治 / 生権力 / 統治性 / マイノリティ / 被差別部落 / 優生学 / 犯罪学 / 精神医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、M・フーコーの生政治論・統治性研究の理論を参照しつつ、20世紀初頭の浮浪者・犯罪者・非行少年・精神病者・知的障害者・娼婦・被差別部落民・ハンセン病者など「社会的逸脱者」とされた人々に関する言説を分析することにより、近代日本の民衆統治の特質を歴史的に明らかにすることである。 今年度は、人種の優劣を科学的に計測しうると主張した犯罪学や優生学の知見が日本に本格的に移入され始める1890 年代の動向を把握するため、① 刑法学や監獄行政、警察関係の雑誌で紹介されたロンブローゾ(伊)の生来性犯罪者説、② 精神医学や社会事業関係の雑誌で紹介されたモレル(仏)らの「変質」の理論、③ 発達心理学・児童学の雑誌で紹介されたヘッケル(独)の生物発生原則、のそれぞれの受容過程について、当該期の刊行資料を収集・整理するとともに、その言説分析に着手した。 その成果は、「生政治とマイノリティ」研究会において、「二〇世紀初頭の社会改良政策における生政治とマイノリティ――教育・医療・矯正の実践思想と知的ネットワークに注目して――」(6月:京都)、「マイノリティ研究状況の検討」(9月:京都)、「賀川豊彦の社会事業と科学的人種主義」(12月:京都)のタイトルで研究報告した。その場において寄せられた意見や他のマイノリティ研究の成果を踏まえ、次年度以後に研究を展開する方向性を確立できた。また竹沢泰子・坂野徹編『人種神話を解体する 2 科学と社会の知』(東京大学出版会、2016年)にその成果の一部を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集は順調に進み、当該期のマイノリティを対象とする社会改良政策全体のデザインとその戦略性を見通せるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以後は、20世紀初頭に日本に移入された犯罪学、精神医学、優生学の(治療・矯正・社会防衛・人種改良などの)知見や理念がどのように内政統治にビルト・インされ、感化救済事業や社会事業などの社会改良政策が構築されたのか、その過程を分析・究明したい。
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Research Products
(4 results)