2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of governing order for the people based on scientific racism in modern Japan : Turn and re-contextualization in Buraku Issues
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16K02224
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
関口 寛 四国大学, 経営情報学部, 准教授 (20323909)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マイノリティ / 被差別部落 / 生政治 / 統治 / 社会事業 / 米騒動 / 優生学 / 犯罪学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、20世紀初頭に刊行された雑誌『慈善』『社会と救済』を購入し、1900年代から1920年代初頭にかけての社会事業の中に科学の知がどのように紹介され、受容されたかについて検討を加えた。 また20世紀初頭に部落改善政策を立案・指導した留岡幸助の関係資料『留岡幸助日記』『留岡幸助著作集』および雑誌『人道』を分析し、上述の日本における社会事業の成立期の展開と部落問題の政策化にどのような相関があったのかを検討した。 その結果、当該期に社会事業が成立した背景として、西洋から移入された犯罪学、精神医学、優生学などの影響により、あらたな民衆統治の技法が成立したこと、それに基づき、浮浪者や貧民、犯罪者、非行少年、精神病者、知的障害者、娼婦など「社会的逸脱者」に潜在的な反社会的危険性を見出す眼差しが形成されていったことが分かった。 その他、内務官僚や社会事業家らの間でそうした関心が共有されることにより、様々な社会事業調査が実施され、1908(明治41)年に開始される感化救済事業や、1912(大正1)年の細民部落改善協議会の開催に至ったことが分かった。そして1918(大正7)年の米騒動に際し、マスメディアをつうじてこうした眼差しが一層強化される形で騒擾に参加した貧民や被差別部落民のイメージが形成されたことも明らかになった。 これらの作業から得られた知見をもとに、次年度には研究成果を論文にまとめ、公刊する予定である。さらに今後、多様なマイノリティ集団への差別・排除を「生政治」の枠組の中で包括的に考察する研究へと発展させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書を作成した際の計画に沿って研究は進んでいる。最終年度に予定していた研究成果のとりまとめについては、一部前倒しする形で執筆を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、20世紀初頭に姿を現した民衆に対する統治のもとで、被差別部落民のみならず貧民、浮浪者、犯罪者、非行少年、精神病者、知的障害者、娼婦、性的少数者など様々なマイノリティへの差別が構造化され、資本主義社会の秩序が形成されたことが明らかとなった。本研究をつうじて把握できるようになった上述の主題について関連資料の検討を重ね、今後のマイノリティ研究の方向性を打ち出したい。
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Causes of Carryover |
購入を検討していた資料(雑誌)の在庫がなく、入手できなかったため、次年度使用が生じた。最終年度には入手して解析を進め、研究成果に反映させたいと考えている。
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