2019 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の科学的人種主義を基盤とする民衆統治秩序の展開:部落問題の転回と再文脈化
Project/Area Number |
16K02224
|
Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
関口 寛 四国大学, 経営情報学部, 准教授 (20323909)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | マイノリティ / 被差別部落 / 統治性 / 生政治 / 人種主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、国際シンポジウムおよび共同研究会での口頭発表、並びにそれをもとにした論文の公刊により、これまでの研究成果を公開した。 具体的には、2019年5月、日仏学術交流シンポジウム「人種主義・反人種主義の越境と転換」(東京)において「生政治的統治のグローバルな展開と被差別部落」を発表した。同シンポジウムでは、欧米の人種主義と日本の部落問題を接合することで、両者に共通する差別現象とそれを生み出す社会的メカニズムについて活発な議論が交わされた。 また、2019年7月、国際日本文化研究センターで開催された共同研究会「差別から見た日本宗教史再考――社寺と王権に見られる聖と賎の論理」において「日本近代の人種主義・差別・統治性」を発表した。同研究会では、日本近代における様々な差別現象を近代以前のそれと比較、および同時代のアジアやヨーロッパにおけるマイノリティの歴史経験との比較に関する有益な知見を得た。 これら2つの口頭発表をもとに、2019年12月、「統治テクノロジーのグローバルな展開と「人種化」の連鎖」(『人文学報』第114号)を発表した。同論文では日本近代における被差別部落に対する眼差しを、同時代のグローバルな人種主義およびそれによって駆動される統治性との相関のもとに捉える観点を提示した。 さらに、この先の研究の方向性として、近現代世界における様々なマイノリティ集団と日本の被差別部落の歴史経験の比較という主題が浮上した。これに関する共同研究が現在進行中であり、本研究の知見を接合することで隣接する研究領域との連携という展望が開けた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果をとりまとめ公表することができた。また本研究を深めるなかで得た知見を活かすことにより、関連する研究として2019年11月に「人間は尊敬すべきものだ」という思想」(『初期社会主義研究』第28号)、2020年1月に「アメリカに渡った被差別部落民――太平洋を巡る「人種化」と「つながり」の歴史経験」(田辺明生、竹沢泰子、成田龍一編『環太平洋地域の移動と人種』京都大学学術出版会)を公刊した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究をつうじて近現代世界における様々なマイノリティ集団と日本の被差別部落の歴史経験に関する比較、および近代社会の統治性が生み出す差別機制という主題が浮上した。これに関する共同研究が現在進行中であり、隣接領域の研究者と連携をはかることで本研究の内容を近現代世界の統治性研究として意義づけ、発展させたい。
|
Causes of Carryover |
当初、本研究の成果を盛り込んだ論文集の出版を予定していたが、その計画がすこし遅れており、執筆にかかる経費を次年度に持ち越すこととなった。研究そのものに関しては想定以上に意義深い内容の成果が得られており、更なる検討を加えた成果物の公刊により研究の重要性と意義をより強く社会に押し出すことが可能になると考える。
|
Research Products
(5 results)