2016 Fiscal Year Research-status Report
ノルウェーに学ぶコミュニティ音楽療法の実践モデルと音楽療法士養成プログラムの構築
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16K02228
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
杉田 政夫 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70320934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 文子 大垣女子短期大学, その他部局等, 准教授 (00369521)
杉田 孝子 (伊藤孝子) 名古屋芸術大学, 音楽学部, 准教授 (20367676)
青木 真理 福島大学, 総合教育研究センター, 教授 (50263877)
谷 雅泰 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (80261717)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コミュニティ音楽療法 / POLYFON / 音楽療法士養成プログラム / ブリュンユルフ・スティーゲ / トム・ネス / ノルウェー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、地域に根ざした音楽療法として高い注目を集めている「コミュニティ音楽療法」は、音楽活動を通じた障害者、高齢者の社会参画、健康増進、文化的生活に寄与しつつ、コミュニティ全体の活性化にもつながっており、社会的弱者の孤立や地域文化の衰退が問題視されている日本においても重要な意義を持つ。本研究では、第1にコミュニティ音楽療法の理論的指導者であるベルゲン大学のブリュンユルフ・スティーゲ氏へのインタビュー調査、実践家であるノルウェー国立音楽大学のトム・ネス氏のセッション観察、病院、施設等の訪問調査を通して、先進国ノルウェーにおける同音楽療法のアクチュアリティを解明する。第2に日本におけるコミュニティ音楽療法と上記調査とを比較検討し、日本の諸地域の社会・文化的コンテクストに合致した実践モデルを構築し、また音楽療法士養成プログラムのあり方について再考することを目的としている。 平成29年度は、スティーゲ氏の著書『コミュニティ音楽療法への招待』(2012年)の翻訳出版作業、ノルウェー調査の計画立案、調査結果の分析・検討のため、3回の研究会を開催した。ノルウェー調査では、8月23日にラグナロックを含めたネス氏の実践観察、25日・26日にPOLYFONプロジェクトと音楽療法士養成カリキュラムに関するスティーゲ氏へのインタビュー調査を実施した。またファナ文化センター、及びコミュニティ文化センターU82にて、子ども、成人を対象としたコミュニティ音楽療法の実践を観察した。加えて北欧における比較対象として、スウェーデンはルンドの福祉施設「ストー・ブロー」における音楽活動を観察する機会にも恵まれた。 国内では、7月29日に北名古屋市コミュニティセンターにて、マイエ(名古屋芸術大学音楽療法実践グループ)と共同で、これまでは個人セッションが中心であったクライエントを,地域社会へと架橋する実践的試みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論研究については、スティーゲ氏の著書の翻訳作業を中心に、ある程度順調に進めることができた。またノルウェーの実地調査についても、概ね研究実施計画通りに進めることができた。スティーゲ氏、ネス氏のご支援、ご協力に感謝申し上げたい。特に、ベルゲン大学グリーグアカデミー音楽療法研究所(GAMUT)と地域の病院・施設、大学教育をネットワーク化することで、優れた音楽療法士の養成を目指すPOLYFONプロジェクトについて、スティーゲ氏に詳しくインタビュー調査できたのは貴重であった。(成果の一端は、杉田他「ノルウェーの音楽療法におけるPOLYFONプロジェクト」『福島大学地域創造』第28巻第2号、107~119頁を参照されたい)。またネス氏の実践であるラグナロックの音楽活動に、我々研究チームも加わらせて頂き、ノルウェーの音楽療法をアクチュアルに感じることができたことは、望外の喜びであった。 国内での実践研究は上記(研究実績の概要)の他、8月20日には北名古屋市社会福祉協議会と共同で、地域における障害児の生活充実に向け、音楽を通じた地域市民同士の交流の促進を目的とした会を開催した。11月19日には地域に開かれた古民家(旧加藤邸)を題材としたアートプロジェクトが開かれ、近隣住民との音楽的コミュニケーションの場を創出することを企図した音楽イベントを行った。またマイエが名古屋芸術大学の総合研究所に所属するという特性を活かし、大学行事である「芸祭」にてクライエント、セラピスト、学生、外部の福祉施設職員とバンドを組み、野外オープンスペースで演奏を行った。 その他、本研究テーマに関連して「音楽療法における共感」や「音楽教育と社会正義」についての学会発表、及び「震災後における福島県浜通りの民俗芸能の復興」に関するシンポジウムのコーディネートを行うなど、活発な研究活動を展開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで観察してきたトム・ネス氏の実践、及びベルゲン市内の病院、施設でのコミュニティ音楽療法について、学会での発表や論文の作成を予定している。またベルゲン大学とノルウェー国立音楽大学における音楽療法士養成カリキュラムやその改革についても、POLYFONプロジェクトとも関連付けつつ、論文を執筆したい。平成29年度においてもオスロ、ベルゲンを訪問し、上記についてさらに詳細に観察、調査する予定である。北名古屋市を中心に展開している実践についても継続し、最終年度に向け、論文にまとめたいと考えている。
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Research Products
(4 results)