2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02229
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| Research Institution | Ibaraki University |
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Principal Investigator |
神部 智 茨城大学, 教育学部, 教授 (20334005)
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2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | シベリウス / ナショナリズム / 自筆譜 / 交響曲 / 交響詩 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フィンランドの作曲家ジャン・シベリウス（1865～1957）の主要作品について自筆譜等の一次資料を調査し、新たな知見から彼の音楽を再評価すること、ひいては西洋音楽史におけるこの作曲家の芸術的業績を適切に位置づけることである。
本研究で特に重視するのはシベリウスの自筆譜の調査であり、それらの資料にもとづいて彼の創作状況、作品の成立過程を明らかにする。そのため、フィンランド国立図書館、国立シベリウス・アカデミー、シベリウス博物館等に残されたシベリウスの草稿、スケッチ類の資料調査を行った。特に交響曲第7番のスケッチ、草稿を詳細に調査、分析し、同作品の複雑な成立史の解明を行いたい。
さらに、当時のフィンランド社会を覆っていた「ナショナリズム」の動向に目を向け、シベリウスが同時代の時代潮流をどのように受け止め、いかにそれを乗り越えたのか、最終的に彼が目指した音楽はどのようなものだったかを明らかにする。円熟期以降のシベリウスは、シンフォニックなジャンルでナショナリズムの動向を乗り越え、「国民楽派」と呼ばれる音楽的アイデンティティに依拠することなく、独自のスタンスで創作活動を展開していく。そうしたシベリウスの創作姿勢を明らかにし、従来のステレオタイプ的な「フィンランドの国民的作曲家」、「孤高の作曲家」という極度に単純化されたイメージからシベリウスを解放し、新たな作曲家像の形成に向かいたいと考える。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、資料調査と作品研究を並行して行う。収集対象とされる資料は、シベリウス関連書籍、論文（特に博士論文）、出版譜のほか、自筆譜、スケッチ、草稿類の一次資料に大きな重点を置く。一次資料に関しては日本国内で閲覧できるものは皆無であり、フィンランドでの調査を行った。
一次資料の調査と合わせ、ブライトコプフ社、リーナウ社、ハンセン社が既に出版しているスコアと比較、検証し、作品の成立過程を明らかにしている。特に、交響曲第５番と第7番の2曲に関してスケッチ研究を行い、その成立過程を検証している。
なお、これまでの研究成果は著書『作曲家・人と作品 シベリウス』（音楽之友社、2017年、第30回ミュージック・ペンクラブ音楽賞受賞）において公表し、従来とは異なる新しいシベリウス像を提示することができた。
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| Strategy for Future Research Activity |
フィンランドで調査したシベリウスの一次資料の検証をさらに進め、これまで公表されてきた二次資料との齟齬を明らかにする。特に、これまで十分に解明されてこなかった交響曲第第7番の成立史に焦点を当て、シベリウス晩年の創作活動における同作品の意義について考察を行う。同様の研究は既にフィンランド国内でも実施され、大きな成果を上げており、シベリウス国際会議やブライトコプフ社の批判校訂版等を通して社会的に認知されつつある。本研究も、最終的にはシベリウスの音楽を考察する上で基盤となる資料研究への学術的貢献を行う形で成果を示したいと考える。
本研究の社会的な公表方法としては、その成果の一部を反映する形で、交響曲第7番の最新校訂版を詳細な解説とともに音楽之友社よりミニチュアスコアとして出版する予定である。交響曲第7番の成立に関しては、当初、3楽章制で構想された作品がどのような経緯で単一楽章形式へと変化していったのか、その過程を明らかにする。また、第一次世界大戦後のヨーロッパ音楽界を急速に覆っていった新しい音楽潮流に対し、シベリウスがどのように対峙したのか、その美学的姿勢についても解明する。
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| Causes of Carryover |
シベリウス関連資料の出版が、次年度に行われるため。その出版に合わせて、助成金を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)
