2017 Fiscal Year Research-status Report
地歌における上方と江戸の文化交流-「芝居歌物」と「浄瑠璃物」を中心に
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16K02233
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
野川 美穂子 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (50218294)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地歌 / 芝居歌物 / 浄瑠璃物 / 歌舞伎 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、計画に沿い、前年度からの継続の研究として、(1)「芝居歌物」「浄瑠璃物」に関する地歌側の資料の整理、(2)地歌の「芝居歌物」「浄瑠璃物」の原曲に関する歌舞伎・浄瑠璃資料の収集と調査、(3)江戸長唄に移曲された地歌の作品分析をすすめた。(1)については、昨年度に行った『歌系図』に記される「芝居歌物」の作品について、その後の歌本類における収録状況の特徴を検討した。大坂系の歌本と京都系の歌本の比較を主軸に行った。未見であった『歌曲時習考(温習考)』の明治版の諸本の収集と比較も行った。また、現行の伝承を音楽的に分析するために、昨年度に作業できなかったLP音源のCD化を進めた。東京と京都(柳川流)の伝承に違いがある作品もあり、その分析にも着手した。作曲者・作詞者については、口伝を紹介する『三曲』などの雑誌から情報を収集して整理した。『歌系図』に記される作詞者の情報には、歌舞伎や浄瑠璃の初演に関係した役者や演奏家の情報が紛れ込んでおり、真実であるとは断定できない情報が多い。その検討の材料となる情報を、歌舞伎研究の成果も含めて収集した。(2)については、(3)とも重なる研究として、長唄《越後獅子》の資料収集と分析を行った。長唄《越後獅子》については、地歌の音楽的特徴と直接には関連しないが、東京国立博物館所蔵の「太鼓手附」の考察も行った。そのうえで、地歌《越後獅子》と長唄《越後獅子》についての論文をまとめた。また、上方と江戸との交流の一例を示す「レンボ」の旋律について、江戸時代初期の旋律の復元を試み、長唄、河東節との関係を含む地歌と山田流箏曲の事例研究を行った。『歌系図』の「芝居歌物」に関連する歌舞伎および浄瑠璃の資料(絵番付、正本、丸本など)については、どこに何があるのかの情報整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地歌側の資料については、昨年度の成果をおしすすめて、作曲者、作詞者、歌詞の情報整理に基づく分析にまで進めることができた。上方文化と江戸文化の交流を知ることのできる地歌《越後獅子》と長唄《越後獅子》については、研究の成果を論文にまとめることができた。同じく上方文化と江戸文化の交流の一例である「レンボ」の旋律については、江戸時代初期の楽譜の復元を行い、江戸の長唄や河東節との比較を含む地歌と山田流箏曲の事例研究を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の実施計画は(1)地歌側の資料と歌舞伎・浄瑠璃側の資料の照合、(2)地歌の「芝居歌物」「浄瑠璃物」の作品分析、(3)江戸長唄に移曲された地歌の作品分析、(4)上方文化と江戸文化の交流についての考察、の4点である。このうち(1)から(3)は昨年度からの継続の課題である。作品分析に関する昨年度の成果は、《越後獅子》と「レンボ」が中心となった。最終年度となる今年度は、対象作品を広げて、研究を推進する。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、資料収集と資料整理にかかわる経費、江戸初期の楽譜からの復元にかかわる経費が必要であると判断し、旅費を控えた。その結果、次年度使用額が生じた。平成30年度も、引き続き、資料収集と整理にかかわる経費を中心に使用する。
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Research Products
(2 results)