2017 Fiscal Year Research-status Report
20世紀のキルギス共和国とカザフスタンにおけるアクン技芸
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16K02235
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
ウメトバエワ カリマン 東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 研究員 (70771989)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中央アジア / キルギス共和国 / カザフスタン / 伝統芸能 / 民族音楽 / 民族楽器 / 無形文化財 / ソ連時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、キルギス共和国・ビシュケクでの調査が中心となり、「アイトゥシュ」学校でアクンの授業が行われている様子を録画・録音することができた。またキルギス国立フィルハーモニーで若手のアクンの「ウーグム・サガ・アイタム」というアイトゥシュ・コンサートの録画ができ、キルギス共和国でもっとも人気があるアクンのトゥトゥクチェフ・アール(1983~)にインタビューを取ることができ、研究の貴重な資料として収集することができた。 また、祝日の「女性の日」に向けてチュイ県のトクモク市でチュイ県立子供音楽学校で行われた子供たちのコンサートや、ケゲティ村の小中学校で音楽の授業の様子を録画、音楽の教員であるボルボドエワ・アジムカンにインタービューを取ることができた。 2016年に初めてカザフスタンとキルギス共和国でアクン技芸の現地調査を行った際に収集してきた資料の一部を日本語の論文にまとめ、『ユーラシア研究』No.56で刊行することができた。また、沖縄で行われた東洋音楽学会及び京都大学の東南アジア地域研究研究所で口頭発表を行い、日本で口承文芸を研究対象としている研究者と情報交換ができた。 2017年に来日したオルド・サフナというキルギス民族楽器アンサンブルのコンサートを実行委員会委員長として主催した際、オルド・サフナが使用していた民族楽器の記録、団長へのインタビューを取ることができ、その資料を「“オルド サフナ 来日公演2017”を通した現在のクルグズ共和国の音楽と楽器の考察」という論文にまとめることができた。本研究対象であるアクンも、公演中使用されていたコムズという三弦民族楽器を使用しているため、この論文では民族楽器全般の中のコムズの位置付けや、現在キルギスで好まれている「音」の分析ができ、アクン技芸の研究にとても役に立つ経験となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はキルギス共和国での現地調査を研究活動の中心とした。ビシュケクにある「アイトゥシュ」学校の訪問、ビシュケクで行われたコンサートやアイトゥシュの録画・録音、キルギス国立テレビ局での撮影、関係者へのインタビューなど、本研究に欠かせない資料を収集することができ、キルギス共和国でのアクン技芸の現状を十分把握できたことで、現在までの研究の進行は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、カザフスタンでの現地調査を継続する。地方で行われているアイトゥシュや、12月に行われる全国アクン大会の「アルトゥン・ドンブラ」を録画・録音し、関係者へのインタビューを進める。この研究の重要なインフォーマントであり、カザフスタンのアクン界でもっとも影響力があるエルマン・ジュルスン(1951~)、カザフスタン国立芸術大学の教員であり現役アクンであるカイナザル・エルケブラン(1984~)、カザフスタン国立大学に属するコルクット・アタ科学研究所の言語・文学研究者のアルムハノワ・リザ(1964~)へのインタビューを取り、さらに彼らを通して他のアクンたちとのネットワークを広げる。2016年にカザフスタンで現地調査を行った際、カザフスタンではキルギスとは異なり、アクン技芸とアイトゥシュの研究が活発化していることがわかった。アルマティにあるカザフ音楽大学の教員・研究員であるウティガリエワ・サウレから紹介された論文『カザフのアイトゥスの音楽』(Музыка казахского айтыса)(2012)はカザフのアイトゥスを音楽の側面から分類しており、本研究にもっとも近い著作であり興味深い。今度の調査ではこの論文の著者、コジャフメトワ・ジャングリ氏に会い、インタビューや情報交換を行い、研究を進めたいと思っている。また、音楽教育機関の図書館や書店に足を運び、現地で出版されている資料の収集を行う。
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