2018 Fiscal Year Research-status Report
表現主義・保守革命・ナチズムにおける美学/政治の交差とその歴史/時間意識について
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16K02237
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石田 圭子 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (40529947)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナチズム / ファシズム / 政治と美学 / 廃墟価値の理論 / アルベルト・シュペーア / カール・ハインツ・ボーラー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究最終年度にあたる平成30年度(2018年)は、これまでの研究成果を論文としてまとめることに注力した。 まず、研究初年度(2016年)および次年度(2017年)に調査と考察を進めていたアルベルト・シュペーアの「廃墟価値の理論」については、これまでの研究成果をまとめ、論文(「アルベルト・シュペーアの「廃墟理論の価値」をめぐって」)として発表することができた。本論文において申請者が明らかにしたのは、シュペーアの廃墟美学と彼のナチズム建築に見られる時間意識である。本論文では、これまで調査研究を進めてきた新古典主義建築家ジョン・ソーンの廃墟理論とベンヤミンのアレゴリー論を参照しながら、ナチズム建築に結実したシュペーアの廃墟への感性が、従来のロマン主義に基づく廃墟理論とは異なる、特異な時間意識を有していることを示した。 またこれまで同時進行で進めていたカール・ハインツ・ボーラーの「突然性」をめぐる研究についても論文執筆を進めた。この論文ではボーラーの「突然性」という時間概念の内容を詳らかにし、それを手がかりとしてモダニズム芸術とファシズムとの接点と相違を明らかにすることを目指した。この研究成果は本年度に開かれた二度の研究会ですでに発表した。さらに近年度中に論文として発表する予定である。 本研究の目的は歴史/時間への感覚という点から、20世紀初頭ドイツにみられる美学と政治が交わる特殊な思考について明らかにすることであった。3年間の研究でこの時代における総体的な時間意識を明らかにするところまで辿り着くことができなかったものの、いくつかの具体例から当時の美学と政治の絡み合いおよびモダニズム芸術におけるナチズムへの傾斜とそれへの抵抗の錯綜の諸側面について時間性という新たな観点からつきとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していたのは(1)ベンヤミンの「弁証法的形象」に見られる歴史/時間意識とベン、ユンガー、シュペーアの歴史/時間意識を比較し、それらの近似、ねじれ、相違を明らかにすること及び(2)これまでの成果をまとめた論文の執筆であった。(1)の課題についてはこれまで申請者が研究を行ってきたベン・ユンガーとの比較にまで至らなかったものの、ベンヤミンのアレゴリー論とシュペーアに見られる時間意識を比較考察し、相違点について明らかにしたことから、おおむね予定通り達成できたと考える。また、これまでの研究成果を論文としてまとめ発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年3月に予定していたナチズム表象に関する海外調査を2019年中に行い、本研究で行った考察を補完する。また、本年度までに果たせなかったカール・ハインツ・ボーラーの「突然性」に関する論文を完成させ、発表する。本研究での成果は、2019年度に採択された科学研究費課題研究「ファシズムにおける「崇高」の美学と政治の関係をめぐる批判的考察」(課題番号19K00133)において発展的に引き継いでいく予定である。
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Causes of Carryover |
予定外の業務が入ったため2018年度に行うはずであったナチズム表象に関する海外調査を予定通り行うことができなかったため。予定していた海外調査は2019年度に行う。
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Research Products
(1 results)