2016 Fiscal Year Research-status Report
19世紀ウィーンにおける音楽愛好家の活動-F.エックシュタインの貢献と支援の状況
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16K02241
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
梅林 郁子 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (10406324)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フリードリヒ・エックシュタイン / アントン・ブルックナー / フーゴー・ヴォルフ / 音楽愛好家 / ユダヤ人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ユダヤ人企業家で音楽愛好家でもあったフリードリヒ・エックシュタイン(1861-1939)に焦点を当て、彼の音楽に関連した活動や貢献の具体的な状況を考察することで、社会的背景も含め、当時の音楽の発展に寄与した音楽愛好家の役割を検討するものである。 今年度は、エックシュタインの残した著書 Erinnerungen an Anton Bruckner, Universal-Edition, Wien, 1924を中心に、エックシュタインの「①アントン・ブルックナー(1824-1896)に対する貢献の実際と、貢献に対する考え方」、「②ブルックナーの人物に対する考え方」、「③ブルックナーの音楽理論や和声に対する捉え方」の三点について考察し、論文としてまとめたので、以下概要を記す。エックシュタインは、ブルックナーに弟子入りをして作曲を学んでいたが、やがて、個人秘書として、ブルックナーの身の回りの雑事を片付けたり、出版や演奏会の準備をしたりするようになった。さらに、エックシュタインはパトロンとして、ブルックナーの作品を世に出すために、積極的に金銭的な援助も行ったのである。また、エックシュタインは音楽に対する強い向学心を持ち、ブルックナーの弟子として音楽理論等のレッスンを受けるなかで、著書を通じ、彼の音楽理論に対する考え方やエピソードを後世に残すという貢献も行った。そこでは、ブルックナーがジーモン・ゼヒター(1788-1867)、さらにはゼヒターが拠っていたジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764)の理論を厳格に守り、弟子にもそれを奨励していたこと、またそこから純正律に基づく理論についても大変に評価していたことが述べられている。一方で、彼のブルックナーを巡る活動は、個人的な興味・関心に拠るだけでなく、当時のユダヤ人を巡るウィーン社会の動向が背景にあることも指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、「研究実績の概要」で述べた著書の内容把握と考察の他、予定通り、12月にオーストリア国立図書館での所蔵資料調査を行った。同図書館には、エックシュタインの残したブルックナー関連の自筆やタイプ打ち原稿が残されているが、今回は、特に未出版のタイプ打ち原稿を中心に閲覧・調査を行った。内容把握については、現在進行中である。以上より、全体として順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、今年度に収集したオーストリア国立図書館での資料の内容把握をさらに進めると共に、エックシュタインの残した出版資料より、フーゴー・ヴォルフ(1860-1903)に対する支援の実際について検討する。また、これらの研究結果は、学会・論文にて発表予定である。
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