2018 Fiscal Year Annual Research Report
Activities of a music lover in Vienna in the 19th century: Friedrich Eckstein's support of and contribution to composers
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16K02241
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
梅林 郁子 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (10406324)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フリードリヒ・エックシュタイン / フーゴー・ヴォルフ / アントン・ブルックナー / 音楽愛好家 / ユダヤ人 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる今年度は主に、19世紀ウィーンにおける音楽愛好家フリードリヒ・エックシュタイン(1861-1939)の著書と、支援を受けたフーゴー・ヴォルフ(1860-1903)の書簡の記述を検討し、愛好家と作曲者、また友人同士の関係にあった両者双方の視点から見た、エックシュタインの音楽に対する貢献と支援の状況をまとめた。 エックシュタインのヴォルフに対する支援は、人物などの紹介と、物質的・金銭的な支援に分けられる。人物などの紹介としては、エックシュタインの著書にはヴォルフとアントン・ブルックナー(1824-1896)との会食の設定や、出版社の紹介についてが言及されている。一方ヴォルフの書簡には、特にアメリカ行きを考えていた際に、後ろ盾となる人物紹介依頼に関する記述が見られた。また、物質的支援として、エックシュタインの著書では住まいの提供、蔵書の貸し出しに関する逸話が紹介されており、これはヴォルフの書簡においても同様である。最後の金銭的支援については、エックシュタインは全く触れていないが、一方でヴォルフの書簡には、借金の申し込みや、また弟ギルバートをエックシュタインの会社に雇ってもらった上で、ギルバートがヴォルフから借りた金を、ギルバートの給料から差し引きで払うよう頼むなど、具体的な金銭援助依頼の実態が見られる。 このように、エックシュタインは人物紹介や物質的支援に重点を置いて著書にエピソードを記しているのに対し、ヴォルフの書簡には物質的支援だけでなく、生活に直結した支援を依頼している様子が現れている。いずれにしても、エックシュタインは寛大にヴォルフの期待に応えており、エックシュタインがユダヤ人であったことも、ヴァグネリアンであったヴォルフが反ユダヤ主義を理念としては掲げていたにせよ、その友情に暗い影を落とすことは無かったのである。
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