2018 Fiscal Year Research-status Report
抵抗か、順応か?――ナチスの芸術政策と「若きラインラント」
Project/Area Number |
16K02259
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
野田 由美意 北見工業大学, 工学部, 准教授 (00537079)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナチスの芸術政策 / デュッセルドルフの展覧会史 / 「若きラインラント」の活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
「若きラインラント」の芸術家たちとナチス時代のデュッセルドルフにおける展覧会
「若きラインラント」に関して、本年度ではナチス時代の展覧会をめぐる問題を取り上げた。そのためにデュッセルドルフでの資料調査を行った。また同都市の芸術宮殿美術館、慶應義塾大学アートセンターの研究者の方々とともに、慶應義塾大学・北見工業大学で、国際シンポジウム「ラインラントの美術1900-1960」を行い、その論文集を刊行した。研究者はその主催者となり、このシンポジウム・論文集において本年度の研究成果を発表した。 この研究において、まずはナチス時代の美術政策の特徴をとらえつつ、とりわけデュッセルドルフにおける展覧会政策がいかに遂行されたのかを明らかにした。 「若きラインラント」の芸術家たちは、ナチス時代に入り、例外なく、亡命するか、ナチスの芸術政策に抵抗するか、やむを得ず順応するか、あるいは進んで迎合するのかの選択に迫られた。本研究では次にこのグループの芸術家たちがそれぞれの選択をした結果、どのような道をたどることになったのかを踏まえたうえで、展覧会に参加した数名の画家たち、すなわち順応した画家としてヴィル・キュッパー、迎合した画家としてリヒャルト・シュヴァルツコプフ等の展覧会出品の背景を考察した。実際のところ、いつまで彼らは展覧会に参加できたのか、またどんな作品を展示できたのか、あるいは展示しなかったのか。それを観ることにより、実際の展示状況や彼らの芸術活動との関係、つまりはデュッセルドルフのナチス時代の芸術状況が明らかになった。また、公然と抵抗した画家だけではなく、順応・迎合した画家の活動を観ることによって、この時代のアートシーンをより深く理解することにつながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
デュッセルドルフの「若きラインラント」の研究者の方々と共に、国際シンポジウムという形で本研究の研究成果を発表することができた。そのため、日本ではあまり知られていない「若きラインラント」や近代ラインラントの芸術を、より多くの人々に知っていただく機会となった。 またその論集は日本語とドイツ語からなるため、日本のみならずドイツの研究者の方々にも評価いただく機会となった。
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Strategy for Future Research Activity |
ナチス時代の「若きラインラント」の画家とコレクターの関係を考察する。つまりこの時代、前衛美術の作品を購入することは可能だったのかを調査・研究する。 「若きラインラント」の職業禁止令を受けた画家たち、あるいはやむを得ず順応した画家たちの作品の売買の状況を、前衛美術コレクター、例えばヨーゼフ・ハウブリッヒなどの購入履歴等を調査することにより明らかにする。それにより、前衛美術がいかに生き延びえたのかを考察する。 デュッセルドルフの各美術館等で資料の調査を行う。
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Causes of Carryover |
購入予定の書籍の支払が年度末を過ぎることとなったため。書籍の購入に使用する。
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Research Products
(4 results)