2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02262
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
芳賀 京子 東北大学, 文学研究科, 教授 (80421840)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ギリシア / ローマ / 英雄 / 肖像 |
Outline of Annual Research Achievements |
英雄崇拝はギリシア各地に認められるが、ペロポネソス半島ではとりわけ盛んであり、早い時期にさかのぼる。そこで9月にギリシアのオリュンピア、トリポリス、テゲア、スパルタにおいて、英雄崇拝と造像に関係する作品の調査および写真撮影をおこなった。オリュンピアでは、ペロプスの英雄廟であるペロピオンからの出土品を確認したほか、生きている人間のなかではもっとも英雄に近い存在とされた競技祭優勝者のブロンズ小像について、その起源が前7世紀にさかのぼる可能性があること、フィガリア出土の前6世紀前半の等身大大理石像が優勝者像である可能性が低いことを確認した。トリポリスではディオスクロイに関係する出土作品を調査すると同時に、そこを拠点として、近隣のテゲアでヘラクレス信仰を示す奉納品について調査した。スパルタでは、ヘレネとメネラオスの英雄崇拝がおこなわれていたメネライオンの出土品を調査し、さらにスパルタ周辺に認められるディオスクロイ崇拝や、祖先崇拝の形跡についても調査した。 クラシック後期に制作され、ローマ時代においてブロンズでコピーが制作された競技優勝者像のひとつ《アポクシュオメノス》に関しては、ウィーン所蔵のものと、近年クロアチア沿岸の海底で発見されたものについて、3Dデータを入手することができた。これに関しては、ウィーン美術史美術館、クロアチア国立修復研究所とともに、3次元形状比較の手法を用いて解析を進めている。 3月にはイタリア学術会議上級研究員のマッシモ・クルトラーロ博士を招聘し、講演会「イメージの力ーミュケナイ時代のギリシアにおける王のイデオロギーと聖なる王権」を開催し、王と英雄の関係やその造形について議論を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3月におこなったマッシモ・クルトラーロ博士との討論により、前5世紀前半におけるマグナ・グラエキアのギリシア都市での英雄崇拝と造像が、ギリシア本土に大きな影響を与えていた可能性に気付かされた。レギオン、ゲラ、メタポンティオンなどの出土品や碑文を考察に加える必要がある。 また、クロアチアの《アポクシュオメノス》については、3Dデータの入手が昨年12月にまでずれこんでしまい、まだ十分な解析が進められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
レギオン、ゲラ、メタポンティオンについては、平成31年度の夏に現地調査をおこなう。資料については、できる限り国内で収集した上で、足りない分に関してはローマにある美術史・考古学図書館や国立図書館、各国の考古学研究所などで収集する必要がある。 クロアチアの《アポクシュオメノス》の3Dデータについては、研究代表者の所属変更により、今後は解析を進めることが容易になることが期待される。 成果に関しては、現在、古代肖像について書籍(単著)を執筆中であるため、そのなかでギリシアの英雄崇拝と造像について執筆することで、研究をまとめることを予定している。
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Causes of Carryover |
Massimo Cultraro博士の招聘を別の研究プロジェクトで行うことができたため、招聘費が不要となった。これを利用して、次年度の南イタリア・シチリアの調査旅行をおこなうこととしたい
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