2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02262
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
芳賀 京子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80421840)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ギリシア / ローマ / 英雄 / 肖像 / 死者 / 競技祭優勝者 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代ギリシアの英雄崇拝は、マグナ・グラエキアのギリシア都市において前5世紀前半に競技祭優勝者が次々と崇拝対象となることで新しい局面を迎えた。そこで2018年9月にターラントとレッジョ・カラブリアで、マグナ・グラエキアにおける英雄崇拝について調査し、特に競技祭優勝者の墓に見られる英雄化の側面について確認した。 現存するブロンズ製の等身大の競技祭優勝者像はほぼ皆無だが、前4世紀に制作された《アポクシュオメノス》(垢を掻く人)に関しては、ローマ時代のコピーと思しきブロンズ像(ウィーン美術史美術館所蔵)が小アジアのエフェソスで出土している。加えて、近年クロアチアの海中からまったく同じ形状のブロンズ像が見つかった。2017年度までにこの2体について3Dデータを入手したので、2018年度はその形状比較を行い、古代におけるブロンズ像の制作と複製について考察することにした。その結果、制作工程に起因すると思われるずれが腕と脚の接合部に認められること、どちらのブロンズ像も型取りによるコピーらしいことが判明した。しかしどちらかの頭部にゆがみがあるらしく、頭部を精密に比較することはできず、どちらの頭部がよりオリジナルに近いかも、2つのサンプルからでは判断できなかった。この作品については、ローマ時代の大理石コピーがウフィツィ美術館にも存在するので、これを3D測定し、それに合わせて歪みを補正し、3D形状比較をやり直すことが望まれる。 なお、前5世紀に競技祭優勝者像を多数制作した彫刻家ポリュクレイトスに関する研究成果(K. Sengoku-Haga et al. 2017)については、ミュンヘン古典彫刻石膏博物館で2019年10月15日から開催される特別展のなかでVR映像をもちいて紹介されることになっており、現在、同博物館およびオーストリア応用科学大学とともに準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クロアチアとウィーンのブロンズ製の《アポクシュオメノス》を形状比較した結果、どちらかの像に圧縮による歪みが発生していることが判明し、第3の作品(大理石コピー)の3Dデータが必要となった。そのため2019年度にフィレンツェのウフィツィ美術館で3D計測を行うこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
英雄崇拝と造像に関しては、現在執筆中の古代肖像について書籍(単著)のなかでまとめつつある。《アポクシュオメノス》については、2019年9月にフィレンツェのウフィツィ美術館での3D調査を予定している。その成果については、2020年3月に古代ブロンズ彫刻についてのシンポジウムを東京で開催し、研究の総括をおこなうことにしたい。
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Causes of Carryover |
追加の3D計測調査が必要となったため、その分の経費を2019年度に繰り越した。
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Research Products
(4 results)