2017 Fiscal Year Research-status Report
宋代文人士大夫の絵画制作・鑑賞に関する研究―北宋後期を中心に―
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16K02271
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
竹浪 遠 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 准教授 (70463445)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 北宋 / 文人 / 士大夫 / 絵画 / 詩文集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中国・宋時代(960~1279)の絵画史の具体像を、作品・文献の両面から精査し、解明することを目的としている。その主軸として、清に編纂された中国最大の叢書『四庫全書』に収録された膨大な当時の文人士大夫の詩文集から、北宋後期のものを主たる調査対象に、作画・鑑賞等の絵画関連記事を抽出し、整理・公開することを目指す。さらに現存作品の調査を実施し、表現技法と主題、題跋等の文字資料の情報を記録・分析し、文献記録との関係を考察する。 上記の課題を達成するため、2年目に当たる平成29年度は、引き続き『四庫全書』に収録される北宋後期の詩文集の通覧作業を行った。また、前年度に抽出した絵画関連の記述の読解・表入力を進めた。さらに、宋代山水画史の基調の一つを成す江南山水画の成立に関する論文を所属先の紀要に発表した。 作品調査については、アメリカ(ボストン美術館、クリーヴランド美術館、メトロポリタン美術館)、台北故宮博物院、京都国立博物館、大阪市立美術館、大原美術館、京都市立芸術大学芸術資料館にて特別観覧を実施し、連携協力者、研究協力者と共に宋代関連絵画の熟覧、撮影を行った。画絹などの作品そのものの情報に加え、題跋や鑑蔵印などの鑑賞、伝来に関する貴重なデータも収集することができた。また、北京故宮博物院、神戸市立博物館などの国内外の宋代絵画に関する展覧会も見学調査した。さらに、宋代絵画の制作拠点の一つである浙江省杭州周辺の地理についても実地調査を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 文献資料の探索・読解について:『四庫全書』に収録される北宋後期の詩文集の通覧については、海外などの調査期間に一時中断もあったが、ほぼ予定通り実施できている。29年度は主に蘇軾、蘇轍、黄庭堅の三者の全集類を対象とした。また、昨年度に抽出した文献資料の整理、読解、表への打ち込み作業も、夏季や春季の休業期間を利用して順次進めている。
2 作品調査:国内・海外に収蔵される宋代絵画および、その様式を考察する上で関連のある作品の特別観覧調査および展覧会の見学について、前年度以上に積極的に実施することができた。得られたデータの分析と文献面の成果も踏まえた考察に関しても、宋代絵画の主流の一つである江南山水画に関する論文を発表するなど具体的な成果があった。主な調査内容は下記の通り。 特別観覧調査:京都国立博物館(5月、伝李唐「田家嫁娶図」)、大阪市立美術館(6月、鄭思肖「墨蘭図」など)、台北故宮博物院(7月、「虎渓三笑図」など)、アメリカ(9月、ボストン美術館・趙令穣「湖荘清夏図巻」、クリーヴランド美術館・李公麟「龍眠山荘図巻断簡」、メトロポリタン美術館・郭煕「樹色平遠図巻」など)、大原美術館(12月、伝董源「群峯霽雪図巻」など)、/展覧会見学:北京故宮博物院「千里江山 歴代青緑山水画特展」(10月)、京都国立博物館「国宝」(10月)、神戸市立博物館「ボストン美術館の至宝展」(2018年1月)/現地調査:浙江省杭州(11月)
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Strategy for Future Research Activity |
1 文献資料の探索・読解について:『四庫全書』に収録される北宋後期の詩文集の通覧作業を継続する。これまでと同様に日課として実施するが、最終年度のため、報告書(資料の一覧表)作成用のデータ打ち込み作業を優先して進める。
2 作品調査:連携研究者の所属館である京都国立博物館、東京国立博物館および、関西を中心とした国内の美術館・博物館の調査を行う。また、海外に収蔵される宋代絵画も展示等があれば調査する。さらに、これまでの調査で得られた撮影画像の整理、分析なども順次進める。
3 研究成果の発表:文献調査の成果のうち読解、作表作業の完了した分を報告書として刊行し、研究機関や研究者に提供し公開促進を図る。また、研究により得られた知見を、論文、シンポジウム、講演会、講義等によって公表する。
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Research Products
(2 results)