2018 Fiscal Year Research-status Report
ローマを訪れた北方芸術家の人的ネットワークに関する研究
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16K02272
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
深谷 訓子 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 准教授 (30433379)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 西洋美術史 / バロック / 17世紀美術 / イタリア美術受容 / ローマ / オランダ絵画 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究内容は、おおよそ以下の3点に集約できる。 (1)前年度に引き続き、具体的な作品研究をベースに、そこから浮かび上がる作家同士の影響関係、交流関係を明確化することを試みた。また、ユトレヒトで開催された「ユトレヒト、カラヴァッジョ、そしてヨーロッパ」と題されたカラヴァッジスムの展覧会を主目的としたオランダ調査において、作品の実見調査と資料収集を行った。 (2)ヘリット・ファン・ホントホルストやバビューレンが有していたと考えられる親スペイン派との人脈をより具体的に探るため、橋渡しを担ったのではないかと想定される建築家と彼らの関係について、ユトレヒト時代の親戚関係・徒弟関係等に基づき検討し、可能性の精査を行った。また同様の目的のために、イタリアの教会において、作品と墓碑の調査を行った(ただし目的の墓碑は逸失していた)。こうした調査の結果、ローマで没したユトレヒト出身の画家ファン・ウェーデと当該の建築家との関連については具体的な状況が明らかになったが、全般的な人脈についてはなお引き続き検討を進める。 (3)親スペイン派との関連について、より広いコンテクストから考察するため、そもそもスペインにおけるネーデルラント美術愛好やネーデルラント美術の輸入等について、15世紀にさかのぼり、その概要をまとめる作業を行った。その成果については論文として発表したほか、アメリカ、ルネサンス学会において「ネーデルラント美術とスペイン」というセッションを企画し(学会Historians of Netherlandish Artによるスポンサード・セッション)、研究発表を公募してセッションを運営、当日は趣旨説明と司会を行ったほか、参加したアメリカ、スペインの研究者と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた海外調査も実施することができ、成果の一部を国際学会におけるセッション企画と、論文としての公表に結びつけることができたため。一方で、昨年度に今年度の予定として想定していた部分の執筆は進まず、別のトピックを論文にまとめてしまったため、一部で積み残しの課題もあることから、予定以上の進捗とはならなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度を迎えるため、調査結果のとりまとめと研究成果の公開に時間を割く。具体的には、ローマにおける北方画家の人的ネットワークに関する全体像を概説の形で執筆し、調査が途中まで進展しているいくつかのケーススタディを完成させ、論文等のかたちで刊行する。夏季休業期間のうちに、必要な補足調査を行い、秋以降を総括の作業に使う予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定書籍の購入手続きが遅れたため、若干の残額が発生したが、次年度に購入する予定。
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