2019 Fiscal Year Annual Research Report
Historical-Anthropological Study on the Creation of Hierotopy and the Image-Memory in the Christian Culture
Project/Area Number |
16K02275
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
水野 千依 青山学院大学, 文学部, 教授 (40330055)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 聖像 / 儀礼 / 奇跡 / 神聖空間 / 記憶術 / 歴史人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、以下の二つのテーマを中心に、西洋キリスト教文化における聖像の問題を歴史人類学的視座から理解することを試みた。 (1) 中世末からルネサンスにかけて、聖なるもの(聖遺物や聖像)が、パラテクスト的装置(枠縁、ヴェール、マント、聖遺物容器、タベルナクルム)、 聖像譚、儀礼的行為によって、いかに神聖空間(ヒエロトピー)を形成していくか。 この問題は、すでに昨年度までに一定の研究成果を公表してきた。最終年度においては、鹿島美術財団主宰講演会『「写し」が権威になる』において、キリストの肖像の問題を中心にこの問題を掘り下げ、その成果は2020年に同財団より冊子として刊行される予定である。 (2)文化的周縁地、とくにアルプス周辺の農村にみられる特異なキリスト教的図像の形成・変容・融合・解体の現象に注目し、「図像 記憶」という概念とともにその論理を探求する。 このテーマに関する海外調査を今年度の課題として積み残していたが、事情により海外出張を遂行できなかった。しかし、主に注目してきた「主日のキリスト」(主日に禁じられた人間の労働や行為によって傷を負うキリスト)という図像を、ただキリスト教の正統的規範から逸脱する図像と捉える従来の見解に対して、「傷を負う身体表象」が古くから記憶術的に機能してきたより広い文脈と結びつけることで、図像の機能を問い直すことができた。農村の素朴な民衆に向けた単なる教訓的図像ではなく、キリストの身体の一つ一つの傷を「場」とし、そこに記憶すべき罪の「イメージ」を結び付けて描くことにより、古来の記憶術的思考を促す力を備えていた事が明らかとなった。さらに、キリストの傷ついた身体が、異教徒の矢に射抜かれる聖セバスティアヌスの身体と視覚的に親縁性を持つ事例や、非キリスト教圏における傷を負う人型などと機能的類比性を示す現象を人類学的に考察する視点を得ることもできた。
|
Research Products
(3 results)