2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02280
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坂上 桂子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90386566)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 美術 / 都市 / アート / 災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である20世紀初期における都市表象の一端を明らかにすべく、本年度はその準備段階として、作品を個々に選び出し、それらについて調査し以下に発表した。 「フィンセント・ファン・ゴッホ《トンネルのある道》」(『建設業界』2016年5月)、「ルノワール《カナル・グランデ(大運河)》」(『建設業界』2016年6月)、「古賀春江《海》」(『建設業界』2016年7月)、「フェルナン・レジェ《建設工事人たち》」(『建設業界』2016年9月)、「カンディンスキー《ムルナウ、鉄道と城》」(『建設業界』2016年10月)、「ポール・シニャック《パリの芸術橋》(『建設業界』2016年11月)、「ウィリアム・グラッケンズ《セントラルパーク》」(『建設業界』2017年2月)、「マクシミリアン・リュス《ムフタール通り》」(『建設業界』2017年3月)。 また、都市という現代的問題により連結させること、さらには、美術という限られた分野だけではなくより学横断的な視点からの展開を模索し、研究を広げることを視野に、2つの国際シンポジウムを企画・開催した。1つは『都市と美術フォーラム 成均館大学×早稲田大学』で、6月3日早稲田大学にて開催した。韓国の成均館大学建築学部から若手研究者を中心に5名および早稲田大学大学院からは多数が参加し、都市と美術について、建築と美術という両者の立場から発表および意見交換の場を設けた。2つ目は、2017年3月10日東日本大震災6年目を念頭に企画した『都市の災害とアート 9・11/3・11』で、早稲田大学にて開催した。ニューヨーク市立大学特別教授ほか、デジタル・アーティスト等実作者、美術館の研究員に発表を行ってもらった。学内外からも多くの参加者を得、都市と美術の問題を広く考える貴重な機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの国際シンポジウムの開催により、多くの人に本研究の問題を広く開示し、韓国やアメリカの研究者とともに考察できた意味では、予定以上の大きな成果を得たと考える。ここでは、都市と美術を概観する上で欠かせない今日的視点について深めることが出来た意味がきわめて大きかった。美術史研究における問題は、それが現代性を持ちえないことにしばしばあるが、そうした視点をこれらのシンポジウムにより獲得できたと思う。とくに「災害」と都市の問題におけるテーマについては、日本においてこうした研究をする意味を見出す点で大変意義深かった。同様にこれらのシンポジウムでは、いわゆる美術史の研究者だけではなく、建築、街づくり、都市計画の専門家、作品の制作者である作者、美術館という現場で仕事をするキュレーターといった幅広い研究者とともに考察・意見交換できたことから、いわゆる学際的・学横断的な視点を獲得するという意味で、従来の美術史研究から展開する可能性を探る大きな一歩となったと考える。一方で、本研究のめざす20世紀初期の都市表象という部分については、19世紀から20世紀はじめにおけるフランス(5作品)、アメリカ(2作品)、ドイツ(1作品)、日本(1作品)についての作品分析をそれぞれ行った。1点ごとの作品研究としてはそれなりの成果を得ることができたが、全体としてまとまりをもった研究とするために、さらなる展開を視野とした研究を今後心がけていきたい。また、都市表象と関連し、20世紀後半にニューヨークで活動した木村利三郎の作品について分析を始めたが、これについても現代性という視点から研究を進める手がかりを得たものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も昨年度同様に、基本的には20世紀初期の都市表象の部分について、個々の作品研究をさらに進める一方で、同時に、これらをまとめる大きな軸を見出すよう心掛けていく。とくにこれまでの研究のなかで、アメリカの20世紀初頭の作品に、問題の要点が予想以上に多く見出せることがわかった。そのため今年度は、さらにこれらの調査について力を入れ、研究対象としていく考えである。とりわけ、日本ではあまり知られていないウィリアム・グラッケンズ、チャイルド・ハッサムといった画家たちに、本研究に必要な興味深い多様な作例があることがわかり、資料の収集をはじめたところであり、まずは調査を進める予定である。また新印象派についても、引き続き、一作品ごとの研究を地道に行うことで研究の層を増やしていきたい。具体的手法としては、個々の作品について、これまで同様、選択・調査・執筆というかたちをとり、発表をしながら小さな研究を積み重ね、大きな視点を見出していくことにする。また現代的視点の獲得という意味で、今日的な問題を考察することを並行に行い、とりわけ、本年度研究発表を行った木村利三郎氏の作品研究を推進することにしたい。シンポジウムや研究会の開催などにより、本研究の問題を多くの研究者と共有する場を設けることは大変有効であったので、今後も開催を実施したい。成均館大学との「都市と美術フォーラム」については、6月に第2回研究会をソウルで開催する予定である。その他、内外の研究者と意見交換をする場を設けるためのシンポジウムや研究会についても、開催を試みる。
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Causes of Carryover |
最終的な使用金額について計算違いにより生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、計算違いによる誤差がでないように努める。使用計画は、昨年と同等である。
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