2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02280
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坂上 桂子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90386566)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 都市 / 美術 / 20世紀 / パリ / ニューヨーク |
Outline of Annual Research Achievements |
【1 作品調査】課題と関連のある作品を抽出、調査研究し、その一部を一般の人びとにもわかるかたちにまとめ、以下に発表した。「ハッサム:ワシントン・アーチ」(『ACE建設業界』2017年4月号)、「モネ:アルジャントュイユの鉄道橋」(『ACE建設業界』2017年5月号 )、「木村利三郎:City」(『ACE建設業界』2017年6月号)、「スーラ:アニエールの水浴」(『ACE建設業界』2017年7月号)、「ロズ・ダイモン:ペイル・メイル」(『ACE建設業界』2017年8月号)、「リベラ:凍結資産」(『ACE建設業界』2017年10月号)、「杉浦非水:上野浅草間地下鉄」(『ACE建設業界』2017年11月号)、「ヴュイヤール:ヴァンティミーユ広場」(『ACE建設業界』2018年2月号)、「岸田劉生:道路と土手と塀(切通之写生) 」(『ACE建設業界』2018年3月号)。 【2 展覧会企画・開催】早稲田大学會津八一記念博物館の収蔵品のうちから、パリに学んだ日本人画家を抽出し、これらを対象に調査・研究・展示する「パリから学んだ画家たち」展を企画、同博物館にて開催した(2017年6月29日~8月6日)。 【3 シンポジウム、フォーラム、研究会の開催】都市の問題を現代の都市における諸課題へと連結させ、美術と多分野との学横断的展開を視野に、研究会やシンポジウムの開催を実施した。『都市と美術フォーラム 成均館大学×早稲田大学』第2回大会を6月2日韓国の成均館大学にて開催した。また、2018年2月2日には、国際シンポジウム『美術館から都市へ―発信する美術館』を早稲田大学にて開催した。その他、韓国の漢陽大学から研究者を招き、2回の研究会を開催することで、ともに都市の表象について考察をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、本研究の主軸である作品調査については、本年度も昨年度から引き続き、具体的に対照とする新印象派から20世紀初頭の作品について、興味深い都市表象の見出せる主題の作品をそのつど選定することからはじめ、一作ごとに調査する作業を繰り返し行い、その成果の一部を『ACE建設業界』にて発表してきた。そこでは、当初目的としてきた20世紀前後のパリ(スーラ、モネ、ヴュイヤール)およびニューヨーク(ハッサム、リベラ)にかかわる表象だけではなく、同時代の東京(杉浦非水、岸田劉生)にも対象を広げることができたのは、ひとつの新たな成果といえる。というのも、とりわけパリからの影響が大きいニューヨークだけではなく、同時代の東京をみることにより、より多様な比較を展開できる可能性につながったからである。同じ意味では、都市という現代的課題を考慮し、現代のニューヨークの表象(木村利三郎、ロズ・ダイモン)についても考察できたのは、現代的・今日的視点を得るうえで重要であった。 2、早稲田大学會津八一記念博物館の収蔵品を調査し、「パリから学んだ画家たち」展を企画したが、これについても、パリという都市と日本との関連性を考察する視点を得るきっかけとなった。 3、国際シンポジウム、フォーラム、研究会の開催においては、それぞれ、「都市と美術」にかかわる本研究の問題を広く開示し、美術史に限らず、建築、文学、社会学など他分野の研究者、および、韓国、オランダなど外国の研究者と意見交換をした。これらは、都市表象の考察にかかわる手法に、従来の美術史学的な視点を超えた新たな視点について示唆を得ることとなり、今後の課題を見出すひとつのきっかけとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
1、個々の作品調査について、これまでに引き続きさらに進めていくことで、都市表象にかかわるデータの蓄積を心がける。20世紀については、初期に限らず、時間軸をより現代に広げていくようにし、新たな視点の展開をめざす。また時間軸だけではなく、地理的にもパリ、ニューヨークからさらに東京へとつながる広がりも視野にいれる予定である。これまで同様に、調査結果の一部を一般の読者向けにまとめて、できるかぎり『ACE建設業界』に発表していく。同時に、こうした形の単発的な発信だけではなく、現在までに蓄積された作品にかかわる文章がかなりたくさんあるため、これらについて今後何等かの形でまとめて発表する方策を検討する。 2、また上記の執筆活動とは別に、今年度は本研究テーマの最終年度となるため、その軸となる新印象派の都市表象について論文としてまとめて発表する予定である。主題の中心はマクシミリアン・リュスとし、リュスがとらえた労働者、工場、パリの新しい都市や夜の都市表現について、19世紀後半パリの社会的状況などを含めて考察する。これにより、新印象派研究の展開をはかるとともに、20世紀前後のパリの都市表象について考える一助とする。 3、以上に加え、研究会等の開催を行う。5月には早稲田大学にて第3回目の『都市と美術フォーラム 成均館大学×早稲田大学』を開催し、韓国成均館大学から若手研究者、教員を招き交流研究の場を設ける。また、6月には国内の研究者とともに研究会を、7月にはブリュッセル自由大学の教員と研究会の開催予定である。年度後半についても、こうした研究会、シンポジウムを数回開催する。開催にあたっては、建築、土木、文学など、学際的な視点を考慮し、学生や一般への公開を行う。
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Causes of Carryover |
全体としてはほぼ計画通りの使用となっているが、人件費の使用について、時間給のため若干の誤差が生じたためである。次年度はこうした問題も含め、厳密に計算し、最終的に計画に沿って使い切る予定である。
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