2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K02292
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
小野 真由美 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (90356270)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 狩野派 / 柳営御物 / 狩野探幽 / 狩野常信 / 永井尚政 / 徳川幕府 / 明暦の大火 / 探幽縮図 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる今年度は、徳川将軍家の御物形成と御用絵師の関連を明らかにするため、「柳営御物集」諸本と鑑定控「探幽縮図」「常信縮図」の調査研究を下記のとおり進めた。 (1)御用絵師の狩野探幽と狩野常信が明暦の大火後に蓄積した鑑定控「探幽縮図」「常信縮図」の調査を行った。まず「探幽縮図」の先行研究の成果をデータ化し、とくに注記の翻刻とそのデジタルテキスト化に着手した。また「常信縮図」(東京国立博物館本57巻)は、全巻の撮影を行った。 (2)徳川将軍家の御物目録のうち、もっとも基本となる「御数寄道具之帳」(東京大学付属図書館)、「明暦大火焼失茶道具目録」(篠山市立青山歴史村)、「銅御蔵御掛物御歌書極代付之帳」(東京文化財研究所)などの調査を行った。これによって、明暦の大火前後の徳川将軍家の御物の輪郭をとらえた。 (3)「探幽縮図」「常信縮図」「御物目録」諸本の調査によって、幕府重臣・永井尚政の関与がみえてきた。よって永井家関連史料を調査し、永井家と探幽・常信の交友をはじめ、御物形成に関わる人物の研究を進めた。そのなかで、狩野探幽の茶の湯における活動を調査し、尚政や稲葉正則、小堀遠州、喜多見重勝との交流の研究を進めた。そして、探幽周辺の美意識に、とくに南蛮や島物といった新たな道具への愛好があることがみえてきた。これは探幽の画業を考える上でも重要な観点であり、次年度以降の研究においてもひきつづき調査をすすめるべきことがわかった。 (4)「柳営御物」諸本には金銭評価を記したものがある。そのひとつが東京藝術大学所蔵本で、御徒士町狩野家に伝来したものである。本研究の過程で同家関連作品の調査がかなったため、同家の祖・狩野長信筆の新出の「山水図」についての知見をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・鑑定控「探幽縮図」「常信縮図」は、これまで、模本や絵手本と位置付けられてきた。しかし本年度の調査によって御物形成と関連付けることがふさわしいという新知見がみえてきた。 ・「柳営御物集」諸本は、江戸文化の重要な基礎的情報を有するもので、その調査結果やデータを、美術作品や絵師の活動に具体的に結びつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度以降は、徳川将軍家の御物形成の様相を、元禄4年の狩野常信、狩野洞雲らによる御物の鑑定に焦点をあてて、明確にしていきたい。さらに御用絵師の役割の解明に向けて、引き続き「探幽縮図」「常信縮図」の詳細な調査と、将軍への献上品と下賜品の調査を進めていく。29年度は、米国・ボストンでの調査、フランス・パリでの調査および、国内の調査を計画している。
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Causes of Carryover |
本年度は、「探幽縮図」「常信縮図」(いずれも東京国立博物館所蔵)の調査とデータ化に多くの時間を割いたため、国内外の作品調査を行なうことが予定よりも少なかった。そのため旅費の消化ができず、次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度以降は、国内外の作品調査を進め、関連図書の購入も積極的に行なう。
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Research Products
(2 results)