2016 Fiscal Year Research-status Report
徳間康快による中国映画上映に見る日本人の対中国イメージの変遷(劉文兵)
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16K02300
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
劉 文兵 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (70609958)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 徳間康快 / 日中映画交流 / 高倉健 / 君よ憤怒の川を渉れ / 日本人のイメージ / 中国人のイメージ / 改革開放 / 中国映画祭 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、著書3冊(そのうち単著1冊、共著2冊)と論文3編(そのうちウェーブサイトへの寄稿が2編)は上梓・公表された。 単著『日中映画交流史』(東京大学出版会)は、戦前から現在に至るまでの日中映画交流の100年に及ぶ歴史を検証する、本邦初の日中映画交流通史であり、とりわけ、1970年代後半から90年代後半にかけて、徳間康快がおこなっていた日本映画と中国映画の上映活動は、日中両国の国民双方に対して政治的状況に左右されない等身大の相手国のイメージを提示することにより、それまでに両国で流布していた、相互のステレオタイプ的な相手国イメージを大きく転換させたという映画史的事実を明らかにした。刊行後、『日本経済新聞』『朝日新聞』『毎日新聞』『読売新聞』など、各メディアに取り上げられ、大きな社会的反響を呼んだ。 また共著『高倉健』(文春文庫)、『映画監督小林正樹』は、それぞれ高倉健、小林正樹が日中映画交流史において果たした役割を、一次資料に基づいて検証した。 いっぽう、徳間康快と中国の関係について、佐高信氏(『徳間康快』著者)、山本洋氏(大映取締役、徳間康快の側近)佐藤正大氏(大映プロデューサー、徳間康快の側近)、女優張金玲(1979年に訪日した中国映画代表団メンバー)ら関係者に取材をおこない、多くの映画史的証言を得た。また、三回ほど、資料収取や実地調査のために中国へ渡り、多くの一次資料を入手できた。論文執筆の土台ができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
徳間康快と中国の関係や文革以降の日本における中国映画輸入のルードを解明すべく、関係者へのインタビューや資料収集をおこない、日本における中国映画上映のデータベースを構築してきたばかりでなく、中国映画界の現状や、現在における日中映画交流の可能性についてもリサーチをおこなってきた。 それらに基づいて論文を執筆し、テレビ(2016年12月2日NHK国際報道2016番組、2016年12月31日中国CCTV映画チャンネル新年特別番組)、全国紙(「朝日新聞」「読売新聞」など)、専門誌(『外交』誌など)を通じて、研究成果を日中両国で広く発信してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに、28年度におこなったリサーチやインタビューの成果を踏まえ、29年度は1970年代後半から90年代後半にかけての徳間康快による中国映画上映活動について、学術論文を執筆するとともに、戦時中の日中映画交流に焦点を当てて、関係者へのインタビューをおこないつつ、戦前戦中、また冷戦時代のそれとの比較を通じて、日中映画交流史の中で「徳間康快」が果たしていた役割を相対的にとらえ、学術論文を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画通り、次年度は、日本で上映された中国映画『万世流芳』(1943年)、『白毛女』(1951年)などの受容を跡づけることをつうじて、戦前から戦中にかけて、日本人の抱く、欧米列強の搾取に喘ぐ「哀れな中国人」と“暴支膺懲”のスローガンに見られる「野蛮な中国人」のイメージ。そして、中華人民共和国建国後(1949年)、革命に邁進する「ユートピア的な中国」のイメージはいずれも政治的状況に左右されていたステレオタイプであったことを検証する。 いっぽう、それに対して、徳間康快の中国とのかかわり方は、戦前のアジア主義、あるいは戦後の親中派の理念と通底していながらも、近代化路線を掲げ、新しい国家イメージを国際的にアピールしようとする中国政府の狙いとも合致していたため、中国側に受け入れられたことを明らかにする。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、関係者への取材や、国内外の学会への参加を予定しているため、国内旅費、海外への渡航費、人件費などの謝金、研究用物品の購入代として、1400000円を請求する。
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[Book] 高倉健2016
Author(s)
劉文兵ほか20名(劉文兵分担執筆)
Total Pages
354(分担執筆は290から303まで)
Publisher
文芸春秋社
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