2018 Fiscal Year Research-status Report
「朝日会館」を巡る文化活動の記録化とその歴史的影響の分析
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16K02301
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
山上 揚平 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (20637079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前島 志保 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 准教授 (10535173)
山本 美紀 奈良学園大学, 人間教育学部, 教授 (60570950)
白井 史人 東京医科歯科大学, 教養部, 非常勤講師 (20772015)
紙屋 牧子 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, 企画課, 研究員 (20571087)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 雑誌研究 / 文化施設 / 芸術研究 / 関西モダニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度はこれまでの研究の総括として、大阪朝日会館と雑誌『會舘藝術』の地元である大阪にて、成果発表のシンポジウム及び展覧会企画「朝日会館と京阪神モダニズム ―戦前・戦中・戦後―」を開催した。 展覧会では、大阪朝日会館と『會舘藝術』の歴史を多角的に捉える解説・写真パネル50余枚に加え、本研究会が収集及び所在を調査した朝日会館催物関連資料及び雑誌『會舘藝術』現物の計60点近くを、全国の図書館、資料館、大学施設、朝日新聞社、大阪フィル、竹中工務店、並びに個人の収集家らの協力のもと展示する事が出来た。又、音楽コーナーでは朝日会館出演音楽家の同時期録音を試聴できるブースを設け、映画コーナーでは大阪朝日会館が撮影された映画『朝日は輝く』(1929)の上映を行うなど、会館の活動を出来る限り立体的に観覧者に提示できるよう試みた。 シンポジウムでは、研究代表者、分担者を含む研究会メンバー9人による研究成果報告が行われたが、学術的成果としては以下の点が挙げられる。①数年に亘る調査によって会館機関誌のほぼ全巻が通覧できるようになり、その変遷から戦前、戦中、戦後各時期における文化的役割がより正確に評価された。②関係者遺族のインタビュー調査や内部資料調査から会館運営に関わった具体的な人物情報が明らかとなり、運営理念との関わりが考察された。③大阪に続いて開場した京都や名古屋の朝日会館に関しても調査が進められ、各館の活動の特色が指摘された。④社会福祉としての子供対象文化事業における朝日会館の役割に光が当てられた。またその他各芸術・芸能ジャンル研究において、会館の⑤能楽の近代化と民衆化における役割、⑥戦前のロシア文化受容の拠点としての役割⑦戦中の映画を利用した大衆動員における役割、⑧戦後の音楽聴衆団体の組織化における役割、また⑨それら各ジャンル間の交流と混交とが行われる場としての役割、等が明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
かねてから望んでいた、関西モダニズム研究の中心地、大阪での研究成果発表が大阪大学の協力を得て実現し、展覧会企画、シンポジウム企画共に予想以上の反響を得て成功裡に終えられたことは大きな進展であったと考えられる。更にはこのイベントを機に関西在住の研究家との新たな交流も広がり、今後の研究の進展にも好影響がもたらされることが期待されている。 また雑誌『會舘藝術』の資料調査に関しても、これまで存在の確認できていなかった新たな巻号の所在が明らかとなり、現在順次刊行中の復刻版にも補遺として収録されることとなった。これも当研究における重要な進展であったと言えるだろう。 一方で、関西での成果発表に対する予想以上の反響を充分に咀嚼し、最終成果方向に反映させるにはもう少し時間が必要であると思われた為、予定されていた論集等の作成は次年度に持ち越されることとなった。 以上の様な経緯から、全体としては「おおむね順調に進展している」という現状認識がもっとも適当と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、主にこれまでの研究成果の総括と外部への発信にあてられる予定である。前年度は展覧会およびシンポジウム開催という形で成果発表を行ったが、今年度はそれらへの反響等も反映させた形で活字媒体での成果発表を行う。具体的には、まず前年度の展示企画をベースとした図版入りの研究成果報告の小冊子の作成と配布であり、これによって限られた会期中には都合の付かなった都内を始めとする遠方の研究者らにも情報を共有して頂くことを目指す。また年度後半からは関西の地方雑誌において朝日会館と『會舘藝術』に関する連載記事を研究会でもたせて頂くことになっており、音楽、映画、演劇、舞踊、美術、写真等、ジャンルごとに専門の研究会メンバーが執筆を担当する予定である。加えて、前年度シンポジウムにおける研究報告をベースに、研究会全体での討議も反映させた上で論文集の刊行も計画している。 また、これまでは定例の研究会を都内において開催してきたが、前年度のイベントを期に広がった関西在住の研究者との繋がりをより一層、活かす為にも、今年度は関西でも研究会を開催したいと考えている。 加えて、朝日会館の活動に関わる関連資料の調査収集に関しても継続して行われる予定であり、重要な新発見資料に関しては平成28年度から刊行の続いている雑誌『會舘藝術』復刻版の「補遺篇」として公にされる見込みである。また復刻版の本体に関しては、研究会メンバーによる解説の作成も順調に進み、今年度内には無事完結となる予定である。
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Causes of Carryover |
研究成果発表の一環として本年度12月に大阪で開催した展覧会企画・シンポジウムの際に、予想以上に現地研究者との交流が広がり、貴重な情報、ご意見を得られたと共に、新たな成果発表の機会をもご提案頂けた。また研究会例会の関西支部会も開かれる見込みとなり、以上の状況から、刊行物等による最終的な成果報告は、上記イベントを機に広がった知見を充分に反映させる上でも、更に準備に時間を掛けた方が良いと判断した為、成果発信に伴う諸経費を次年度に持ち越すこととなった。 従って、次年度使用額は、主に活字による成果発信(展示イベントの成果報告パンフレットの作成、関西地方誌におけるメンバーによる連載記事分担執筆等)に伴う諸経費〔印刷費等〕、及び関西での研究会開催の経費〔交通費、会場費、等〕、及び引き続き研究会メンバー各自の所属学会に於ける成果発表の為の費用(旅費等)に充てられる予定である。 またその他、これまでの年度と同様、関連一次資料の調査収集や、関係者のインタビュー調査も継続して行われる予定であり、それに伴う購入費や謝礼、交通費等も見込まれる。
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Research Products
(23 results)