2016 Fiscal Year Research-status Report
Cinema and Sound in East Asian Mediasphere: in the Case of Japan and Joseon in the1920s and 1930s
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16K02308
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
朱 宇正 名古屋大学, 文学研究科, 助教 (40770524)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | サウンド・メディア / 発声映画 / トーキー / ラジオ / 1930年代 / 植民地朝鮮 / 日本 / 1920年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度には主に植民地朝鮮における一次資料の調査と収集、また朝鮮の発声映画への転換期の歴史に関する二次資料の分析を行った。一次資料調査のため、2月末-3月初にかけて韓国の延世大学、国立図書館、ソウル歴史博物館で調査を行い、『批判』、『文章』、『新世紀』、『博文』、『人文評論』、『新女性』などの雑誌から1920-30年代のサウンド・メディア(発声映画、ラジオ、蓄音機)について論じられた記事や批評を収集した。この中、まずサウンド・メディアの形成の過程に関わる植民地と帝国の間の関係を極めるため、日本で修学・活動をした経験のある批評家たち-特に徐光霽、朴基菜、金幽影-の評論を分析した。彼らの批評の重要な立場は「啓蒙主義」と呼ばれることで、発声映画の製作に関しては、技術装備と人力、また投資資本という色んな側面でのインフラの整備を強調する一方、他方にはその対案として推進されていた日本との共同制作への傾向を比較文化的観点から警戒している。これは「植民地的なジレンマ」とも言われる観点だと結論を引き出すことができる。 二次資料としてはジョン・ジョンファ、イ・ファジン、キム・スンジュなど最近韓国の学者たちの間に論じられている初期発声映画関連の論文を検討した。これで共通的に見つかれる観点は、朝鮮におけるいわゆるトーキー映画の展開を製作より上映と観覧の歴史として把握している点である。これによって、朝鮮の発声映画史研究には外国のトーキー映画が上映され始まった1920年代末までその対象が広がれているし、また劇場の中に日本語や英語などが混在する多重言語的なメディア環境の中、その政治的な意味が重要なテーマとして取り上げられていることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初今年度の目標とした「サウンド・メディアに関わる社会言説を映画批評家などの知識集団が発表した文献を中心に研究する」ことは、植民地朝鮮を中心とした綿密な一次資料調査と分析を通じて果たすことができた。朝鮮の場合に関する一次資料の収集は今年度でほぼ終わることができたと言える。一部残ったのはオンラインや日本の図書館を通して収集できると思われる。ただ朝鮮の映画批評家と日本との関係性についてはもっと証拠になる部分を調査・分析する必要がある。 二次資料は一次資料に合わせて主に朝鮮の発声映画史に関する研究を分析したが、これによって一次資料に現れる批評家たちの製作中心的な観点とは異なる、もっと上映や観客の側面からサウンド・メディアを把握する接近法を確認したのは重要な進歩である。ただ当初目標にした西洋圏の学者たちのサウンド・メディアについての研究については今後調査・分析を続く必要がある。このため、今年3月開催された米国の「映画・メディア学会」に参加して多様なサウンド関連研究のトレンドを確認し、現在はサウンド・メディアに関した西洋の先行研究を収集・整理している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度にはまず発声映画に関する日本側の言説を批評や記事などを通して分析する。批評は代表的に飯島正、岸松雄、筈見恒夫などの1930年代の著作を優先的に研究し、また1920年代末から30年代にかけて『キネマ旬報』、『キネマ週報』などの専門雑誌に載せられた記事も調査する。殊に1928-1929年の発声映画への転換初期に現れた言説に注目して整理し、これを映画産業側の動き、特に松竹のサウンド映画政策と比較して分析する。この研究の結果は8月にあるEuropean Association for Japanese Studies学会で発表する予定である。 二つ目は、発声映画の中の女優の「音声」についての研究を進める。このためには、映画テキスト上の声の形式的な特性やその機能―特に聴衆に与える情動的ないし政治的影響―に関する理論的な二次資料(主に西洋から)の調査・分析が必要である。この結果は、以前一部分研究が行っていた映画産業的な側面からの考察、つまりタイアップ広告についての研究成果、そして田中絹代のケース・スタディーなどと一緒に組み立てて、論文の形で出すことを目標にする。 三番目は植民地朝鮮に関する一次資料と二次資料の研究を続ける。一次資料はまだ調査が欠けている『朝光』、『新東亜』、『中央』などの雑誌の関連記事を日本で収集する一方、今までの調査資料の整理・分析に拍車をかける。二次資料も韓国学者たちの論文を中心として調査をし続ける。この結果を一番目の日本側のサウンド・メディア批評分析と比較することを通じて、当初主な目標とした帝国と植民地の間の関係性を明らめることを目指す。
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Causes of Carryover |
二次資料(特に英語で出版されたもの)と映像資料の調査が延ばされていて、その購入に使う分が残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
二次資料と映像資料の購入を計画通り行う。
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