2019 Fiscal Year Annual Research Report
"Leather or felt!" Paradigm shift research in keyboard music brought about by changes in the material that strikes the strings
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16K02311
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
山名 仁 和歌山大学, 教育学部, 教授 (00314550)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プレイエル / ハンマーヘッド / ダンパー / フェルト / 革 / ウィーン式フォルテピアノ / ペダリング / 連弾 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハンマーヘッドにおける革からフェルトへの素材の変換が演奏法に与えた影響については、パリにおけるプレイエル周辺のフォルテピアノ製作事情に限定した形で一定の結論が出たといえる。つまり1830年代のプレイエルにおいては、アカジカの首の皮を原料とする油鞣しの革が第1層において使用されており、ウィーンのタンニン鞣しによる革と違い、厚めで柔らかな仕上げであったため、フェルトとの互換性が高かったというものである。ただし革のハンマーヘッドに拘ったドイツ語圏において主流となる過程については今後の大きな課題といえよう。一方で演奏法の変遷については、本研究開始当初から注目していたダンパーの形状と素材の変化、これに伴うペダリングの変化と関連づけて研究されるべきであることが明らかとなってきた。この観点から最も注目するべき作曲家はショパンと言えよう。ショパンは同時代の作曲家に比して詳細にペダル記号を記していた。ショパンのペダリングの研究は、本研究者の次の研究課題である「ペダルを離す指示の位置に注目したピリオド楽器によるショパンのペダル法研究」に引き継がれることになる。ところでショパンもパリ定住以前にはウィーン式の楽器を主に演奏していた。ウィーン式フォルテピアノのダンパーの特徴はハンマーヘッド同様にタンニン鞣しによる羊の革で覆われ、特に中低音にウエッジ型のダンパーを配置することによって、止音効果が高められていることが当時のパリおよびイギリス式の楽器と異なっていた。この止音効果の機能と楽曲との関係を明らかにするために、本年度は広いテクスチャーを持ちながらも、極力ダンパーペダルの使用を抑えることのできる連弾曲に特化し、演奏研究を試みた。その結果ウィーンの楽器に関しては、現代用いられているシンコペーテッドペダルを安易に多用しない方が、より楽器の特性と美質を顕在化させることができることが明らかとなった。
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