2017 Fiscal Year Research-status Report
チェコ・ゴシック研究――カレル4世とフスの時代の文化と精神
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16K02328
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
石川 達夫 専修大学, 文学部, 教授 (00212845)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ゴシック / チェコ / オロモウツ / プラハ / クシヴァーク / ピエタ / 聖母 |
Outline of Annual Research Achievements |
4年間の研究の1年目に当たる平成28年度は、チェコに出張して実地調査を行い、かなりの写真撮影を行うと共に、かなりの数の資料を収集した。2年目に当たる平成29年度は、あえて出張は行わずに、収集した相当数の資料の整理と解読を行った。収集した資料が非常に多いことと、他の校務に時間を取られたために、残念ながら思ったほど研究が進まなかったが、それでもまずオロモウツのゴシックについて研究を進め、オロモウツのゴシック建築と、とりわけ「クシヴァークのピエタ」と呼ばれるチェコ・ゴシック彫刻の傑作を分析し、「チェコ・ゴシック研究(1)──オロモウツと「クシヴァークのピエタ」」として論文にまとめることができた。 その過程で、「クシヴァークのピエタ」が1390年頃にプラハで制作されたと推定され、磔刑死したイエスを抱く聖母を美少女として造形したこの作品が、聖母を中年女性として造形していたそれまでのピエタから大きく転換したこと、それは当時のチェコの神学的思想を反映した「国際ゴシック様式」のチェコ的ヴァリアントの「美しいスタイル」に属するものであったこと、「クシヴァークのピエタ」と酷似した「ゼーオン修道院のピエタ」(バイエルン国立博物館蔵)もやはり1390年代のプラハで制作された、いわば双生児的な作品であること、更にそのような新しいピエタがその後(カレル4世の出身王朝である)ルクセンブルク家の支配地域の各地に広まっていたことが分かった。チェコ・ゴシックの特徴を析出することを重要な目標とする本研究において、この点は一つの成果と言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
収集した資料が非常に多くて整理と分析に非常に時間がかかること、他の校務に時間を取られたために本研究に十分な時間を当てられなかったことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目も出張は行わずに資料の整理と分析に集中し、更に1本以上の論文を書き上げるつもりである。その上で、最終年度に再び出張を行って、調査し残した都市の調査を実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、前年度に収集した資料の整理と分析に専念するために外国出張を控えたことが第1の理由である。また、現有のレーザープリンタ複合機が古くなったために買い換える予定であったが、トナーがまだかなり余っていること、また新型のレーザープリンタ複合機については、技術の進歩を見極めながら慎重にどれにするか決定した方が良いため、購入を次年度以降に先送りしたことが第2の理由である。残額は、次年度以降、OA機器の買い換えと外国出張に使用する予定である。
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