2018 Fiscal Year Research-status Report
チェコ・ゴシック研究――カレル4世とフスの時代の文化と精神
Project/Area Number |
16K02328
|
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
石川 達夫 専修大学, 文学部, 教授 (00212845)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | チェコ / ゴシック / 大聖堂 / 尖頭アーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の重要な点として、チェコ・ゴシックの(他国のゴシックとは異なる)特徴を析出するということがあり、既にチェコの聖母像の特徴については論文にまとめて発表したが、2018年度は、チェコ・ゴシック建築の特徴を析出すべく、チェコ各地の大聖堂の研究を行った。チェコの大聖堂、また一般にチェコ・ゴシック建築の特徴としては、デザイン、特に天井(尖頭アーチ等)のデザインの個性が挙げられる。そのような建物の内部に入った途端に、人は天井一杯に広がる複雑で美しく個性的なデザインに目を見張る。これは恐らく、チェコ・ゴシックが後のチェコ・バロックと親縁性が強く、両者が融合さえする要因になっているとも考えられる。 特に注目すべき天井のデザインとしては、プラハの聖ヴィート大聖堂や(プラハ城の)ヴラヂスラフ・ホールなどの良く知られているものだけでなく、(首都プラハを中心とするボヘミア地方ではなく、東のモラヴィア地方の)ブルノやオロモウツの大聖堂などもあることが分かった。特にモラヴィア地方の大聖堂のデザインは大変興味深く注目すべきものであり、これについてはある程度研究を進めた。しかしながら、一般にヨーロッパ建築に当てはまることであるが、古い記念碑的建築物の中には長年の間に修復・改築・増築がなされてきているものがあり、一見ゴシックと思われる部分が実は後の時代に作られたものである場合もあることが分かった。火災などで破壊された部分の(元通りの)修復、資金不足や戦乱などのために建築が中断した後の元の設計図通りの(後世の)増築のほか、後世の建築家による新しい(ネオ・ゴシック的な)修復・改築・増築などもあり、果たしてこれらを「ゴシック」とひとまとめにして良いのか、それとも時代を厳密に区別して扱うべきなのかは、更に今後検討が必要であることも分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
チェコ・ゴシックの特徴について、まず美術に焦点を合わせてチェコの聖母像を通してその一端を明らかにし、次に建築に焦点を合わせてチェコの大聖堂などの特徴を研究し始めたものの、「研究実績の概要」にも記したように、修復・改築・増築の問題に慎重を期す必要があることが分かり、それに手間取った。また、学内の業務とその他の仕事に時間を取られ、科研の研究に十分な時間を当てられず、国外出張調査もできなかったため、チェコ・ゴシック建築についてはいまだに論文にまとめられる段階には至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度はチェコ・ゴシック建築の研究を進め、更にその他の領域にも研究を広げていきたいが、2019年度が本科研の最終年度であるため、研究の遅れを取り戻すことができなければ、1年延長することも視野に入れて進めたい。
|
Causes of Carryover |
学内業務等に時間を取られて海外出張ができなかったことや、パソコン周辺機器の買い換えを遅らせたことなどのために、その分を次年度に持ち越すことになった。2019年度以降に使用する予定である。
|