2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16K02328
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
石川 達夫 専修大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (00212845)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ゴシック / チェコ / プラハ / 美麗様式 / 美しいピエタ / 美しい聖母 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで行ってきたチェコ・ゴシック建築の研究に続き、最終年度には、美術、文学、更にチェコ・ゴシックの政治・社会的背景について集中的に研究を進め、特にチェコ・ゴシック特有の「美麗様式」を鍵としてチェコ・ゴシックの全体像を明らかにし、研究の成果を幾つかの論文として公刊した。 研究全体の鍵となる「美麗様式」については、「国際ゴシック様式」のチェコ的分枝として捉えられるものだが、特に教会大分裂とペスト大流行の時期に、第三代プラハ大司教イェンシュテインのヤンがペストに感染して死に瀕したことをきっかけとして、彼が救いをもたらす聖母マリアを永遠に若くて美しい教会の象徴として表象し造形させたことが影響を与えて「美麗様式」が成立したことが分かった。その「美麗様式」の代表的作品である「ロウドニツェの聖母」と「クシヴァークのピエタ」と同時期に、中世チェコ・ドイツ語文学の傑作である『ボヘミアの農夫』と、それに影響を受けたチェコ語の『織匠』も書かれ、これらの間には内的な関連があると考えられることも明らかにした。また、「美麗様式」として表れたチェコの「国際ゴシック様式」とフランスやイギリスの「国際ゴシック様式」との繋がりも、王室どうしの姻戚関係などを通じて辿ることができた。 全体として、チェコ・ゴシックの文化と精神を総合的に捉え、諸作品に表れている特徴的な表象やモチーフ(ピエタと聖母子像など)を通してチェコ・ゴシックの特徴を探るという目的は、かなり達成できたと思われる。
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Research Products
(3 results)