2017 Fiscal Year Research-status Report
戦後ドイツ美術における「歴史的アヴァンギャルド」の受容
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16K02335
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
香川 檀 武蔵大学, 人文学部, 教授 (10386352)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ドイツ美術 / 戦後ドイツ / ダダ / アヴァンギャルド / 前衛芸術 / 現代アート / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは、戦後ドイツの美術に、戦前のいわゆる「歴史的アヴァンギャルド」(とくにダダ・シュルレアリスム)がどのように再評価され受容されているかの調査を目的としている。平成29年度の研究計画は、(1)資料の収集と整理、(2)ベルリンを始めとするドイツでの現地調査、(3)ドイツの研究者との交流、(4)ダダの戦後受容に関する論文の執筆、の4点であった。また、平成30年度の研究計画であった(5)海外から研究者を招聘しての講演会・研究会の開催を、前倒しして実施した。 (1)戦前アヴァンギャルド芸術に関する資料を継続して収集し、絵画だけでなく写真やフォトモンタージュに関する文献を集め、画像データも収集・整理をおこなった。(2)(3)2017年8月にドイツで現地調査を実施し、ベルリン州立美術館のアーカイヴで調査を行ったほか、同館学芸員と情報交換を行った。また、ドイツにおけるダダの研究者、数名と面談し、研究交流をはかった。 (4)論文の執筆に関しては、28年度に行った戦間期の具象絵画についての雑誌論文をさらに展開するかたちで、ハンナ・ヘーヒの戦間期の絵画論を執筆し、学内の紀要に投稿した。 (5)ドイツのブラウンシュヴァイク美術大学教授であるカタリーナ・ズュコラ氏を日本に招聘し、2017年11月に3回にわたり東京と京都で講演会を実施した。戦前アヴァンギャルドによって実験的に使用された写真が、戦後の現代アートのなかでどのように受容され展開されているかについて報告していただき、日本の研究者と活発な意見交換が行われた。ドイツにおける美術史および写真研究の第一人者であるズュコラ氏とは、今後も研究交流を継続していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦前の歴史的アヴァンギャルドとくにダダと構成主義に関する資料はかなり網羅的に収集することができた。まだそのすべてを読み込むことができず、今後の作業課題として残されるが、とりあえずこれまでの文献調査によって戦前から戦後へ、という流れのなかで、特定の作家に絞った論考を執筆することができた。とくにハンナ・ヘーヒに焦点をあてたモノグラフは、執筆が順調に進んでおり、平成30年度内の刊行が見込まれる。 研究者との交流については、現地ドイツでの研究交流のネットワークを構築しつつあり、日本への招聘も実現することができた。表象文化論学会、イメージ&ジェンダー研究会、京都大学の映像コロキアム、などで公開講演会を開催し、カタリーナ・ズュコラ氏の研究を日本に紹介することができたのは大きな成果であった。講演原稿の日本語訳を来場者に配布するかたちをとったが、できればズュコラ氏の研究を日本で出版したいと考えており、将来、新たなプロジェクトととして立ち上げることも検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の以上のような成果に基づき、研究目的の達成のために30年度は以下の点に力を傾注する。 (1)当初の計画のとおり、戦前アヴァンギャルドと戦後アートに関する資料調査の継続と3年間の調査の総括。今年度は、英語圏で出された関連テーマの博士論文についても調査を行う。 (2)戦後のダダ受容に関する論文の執筆。本研究プロジェクトのそもそもの問題提起は、戦間期のダダなどの前衛芸術が、戦後ドイツにおいてどのように受容されていったかを、国際的な美術界の動向や、東西冷戦などの政治的背景なども考慮しながら、明らかにすることであった。この点に関して、これまでの調査で判明したことをまとめるかたちで、論文を執筆する。 (3)ドイツの研究者との交流。当初の計画では、最終年度にあたる平成30年度に海外から研究者を招いての講演会・研究会の開催を計画しており、ドイツから研究者を招聘する予定であったが、実施を繰り上げて昨年度に実施したため、来年度は招聘は行わず、申請者がドイツに現地調査を行った際に、現地にて交流を行うのみとする。 (4)研究成果の公開。上記(2)のダダ受容に関する論文は、すでに美術専門誌『美術運動史研究会ニュース』8月号に掲載を予定している。また、ハンナ・ヘーヒに焦点をあてたモノグラフを、本研究プロジェクトが終了する平成30年度の年度末までに出版する予定である。(水声社より刊行)
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Causes of Carryover |
当初の計画より1年前倒しで29年度中に海外より研究者を招聘することになり、次年度分より100万円の前倒し請求を行なった。実施にあたっては講演会の経費を節減するなどの努力により、前倒しした研究費に未使用分が発生した。未使用額は30年度に実施するドイツ現地調査の費用の一部とする予定である。
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Remarks |
1)シンポジウム「厄災の記憶--その表象不可能性」はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト(いわき芸術文化交流館アリオス(福島・いわき市)、2017年10月5日 2)講演会主催「カタリーナ・ズュコラ滞日連続講演会」、武蔵大学(東京・練馬区)、2017年11月11日/お茶の水女子大学(東京・文京区)、11月12日/京都大学(京都市)、11月18日
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Research Products
(3 results)