2017 Fiscal Year Research-status Report
アフリカの彫刻家エル・アナツイの見直しと脱欧米中心的な新しい美術論の創出
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16K02339
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
川口 幸也 立教大学, 文学部, 教授 (30370141)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アフリカ / 同時代美術 / つながり / 表象 / 歴史 / 展示 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画2年度目の2017年は、初年度に引き続き、8月にナイジェリア南東部のンスカにエル・アナツイの工房を訪ねて、作品制作の状況をビデオと写真により記録するとともに、エル・アナツイ本人、および制作に従事する助手たちから聞き取り調査を行った。アナツイによれば、現在、彼の工房では全部で45人ほどの助手が、非常勤の形で雇用されている。彼らの経歴、生活状況、仕事に対する意識と認識は実に多様であるが、2016年、2017年の2年間で、全員のほぼ6割ほどについて、具体的な聞き取り調査を行うことができた。 アナツイ自身は国際的なアートワールドの最先端で活躍しているが、彼の仕事ぶりの特徴は、地元の人びととの密接なつながり、協働を重視していることにある。そのため、地元の人たちにとっては、芸術作品の制作云々とは別に、仕事と収入の安定的確保という側面がある。こうした部分により深く踏みこむことにより、アナツイの仕事ぶりと作品の持つ、西洋とは違う歴史的、文化的な意味が明らかになるものと考えている。したがって、助手たちに関する個別の調査は本研究にとってきわめて重要である。 2017年度の調査では、何人かの助手たちについては、家族構成や生活ぶりまで実地に知ることができた。この調査は、今後も引き続き行っていく予定である。 なお、エル・アナツイは高松宮殿下記念世界文化賞の受賞者に選ばれ、授賞式に合わせて2017年10月に来日した。短い滞在ではあったが、この折に、都内美術館関係者を交えて、彼にインタビューを行った。その際に、本研究成果の発表の一環として、近い将来における日本国内での、彼の半生を回顧する展覧会の開催可能性が話題になった。アナツイ自身はこれに対して、2021年の開催ということで前向きな反応を示した。また私のインタビューを含む来日時の様子が、同賞を記念するフジテレビの番組で紹介された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エル・アナツイと私の交流は今年で27年に及ぶが、そうした両者の信頼関係もあってアナツイ本人は極めて友好的、協力的である。また、アナツイの弟子であると同時に右腕ともいうべき存在で、やはりアーティストで大学講師のオニイシ氏が私の研究に対して理解を示し、現地での活動に様々な便宜を図ってくれている。そして、アナツイの工房の助手たちも一様に好意的である。 一方、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したことからもうかがえるように、日本国内でもエル・アナツイへの、ひいてはアフリカの同時代美術への関心が徐々に高まっており、2018年11月から都内の美術館でアフリカ現代美術展(仮称)が予定され、そこにアナツイの作品も展示されることになっている。 これらのことが追い風になって、現地での研究はほぼ順調、円滑に進んでおり、また国内でも理解を得られやすい状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は研究計画の最終年に当たる。そこで、まず、これまでのところで遺漏がなかったかを再度点検し、あればその部分を補う。そのうえで、引き続き、現地での聞き取りを中心とした調査を積み上げていく予定である。 2018年度の前半は、所属先の大学の海外研究制度を利用してフランスに滞在しているため、おもにヨーロッパにおけるアフリカ同時代美術の展示、位置づけについて包括的な調査を行う予定である。 また、2019年度には横浜で日本政府主催により第7回アフリカ開発会議が行われる(会期は未定)。これに合わせてアフリカ文化の紹介事業への機運が高まることが予想されるので、本研究の成果発表のさらなる可能性を探っていくつもりである。そして最終的には、論文をはじめとする著述や展示に結実させていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、現地で撮影したビデオ映像につき、翻訳と編集作業をまだ行っていないことによる。その理由は、3年間の研究計画がすべて終わり、撮影作業が完了した段階で翻訳と編集を行ったほうが、全体の流れを見て記録映像の取捨選択をするうえでは、より合理的であるとの判断による。計画最終年度では、この作業に伴う作業委託費、人件費、機材費等で計約150,000円を使用する予定。 また、2018年度もナイジェリアのンスカを訪ねて、現地での聞き取り調査を行い、あわせてヨーロッパで予定されている展示について調査する。この経費に600,000円を見込んでいる。そして、採取的な成果報告の一環として結果をとりまとめ、報告書を作成する。この費用に残りの65,564円を充当する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] 「ポリタンクと仮面舞踏をつなぐもの」(和英)2018
Author(s)
川口幸也、Lauren Greenfield, Pascal Beausse, Frank Horvat, India Dhargalkar, Francois Cheval, Patrick Mauries, Simon Baker, Philippe Bergonzo, Mark Sealy, Gonzalo Golpe, K-NARF
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Journal Title
KYOTOGRAPHIE 2018 Catalogue (展覧会図録)
Volume: 1
Pages: 86-87
Int'l Joint Research
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[Journal Article] 作家解説「ロミュアル・ハズメ」(和英)2018
Author(s)
川口幸也、Lauren Greenfield, Pascal Beausse, Frank Horvat, India Dhargalkar, Francois Cheval, Patrick Mauries, Simon Baker, Philippe Bergonzo, Mark Sealy, Gonzalo Golpe, K-NARF
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Journal Title
KYOTOGRAPHIE 2018 Catalogue (展覧会図録)
Volume: 1
Pages: 86-87
Int'l Joint Research
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