2019 Fiscal Year Annual Research Report
Reviewing An African Sculptor El Anatsui to Approach a new De-Eurocentric Framework of Art and Art History
Project/Area Number |
16K02339
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
川口 幸也 立教大学, 文学部, 教授 (30370141)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アフリカ同時代美術 / エル・アナツイ / 足元の歴史文化 / 独自の語り / 情報発信力 / インフラ整備 |
Outline of Annual Research Achievements |
8月に、エチオピアとナイジェリアで調査を行った。エチオピアの同時代美術の存在感は大きくはないが、若手アーティストは一定数いる。近年、Gebra Kristos Desta Center、Addis Fine Artなど、民間で主に近現代美術を紹介するギャラリーが現れた。これらの情報発信力が高まれば、豊かな可能性が開けてくるだろう。ナイジェリアでは、ンスカにエル・アナツイを訪ねた。今回も工房で働いている作業員から貴重な話を聞くことができた。滞在中、近隣のエヌグでアナツイの講演会が行われたが、その内容は彼自身による半生の回顧であり、芸術論であり、文明論でもあり、これを聞けたのは大きな収穫であった。10月には、カナリア諸島ラスパルマスを訪ね、かねてアフリカの同時代美術に前向きであった大西洋近代美術センターの調査をした。この地で、アフリカの同時代美術を展示することの意義を、館長のO.B.Jinorio氏から詳細に聞くことができた。 以上を含めて、過去4年間の研究を基に、12月に東京大学で行われたシンポ『アフリカから美術を売り込む』に招かれて発表をした。 4年間に及んだ本研究により、次のことが明らかになった。エル・アナツイの作品は、彼が作業補助員として雇う数十人もの地元の人たちとの共同作業の成果である。その作業の過程は、アナツイが足元の歴史と文化を敬い、それらに深く根ざしている事実を物語っている。彼の作品の際立った独自性の源泉はそこにある。ただ同時に、アフリカ全体を見渡せば、彼が成し遂げた業績を次の世代がどう受け継いでいくのか、そして美術館などの文化発信の拠点となるインフラをどう整備するのかという課題があることも明らかになった。今後、これらの成果を多くの人と共有することで、エル・アナツイ、ひいてはアフリカの同時代美術への関心が高まり、美術という欧米中心的な概念がより多元化することを願う。
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