2016 Fiscal Year Research-status Report
奄美における文化の〈メディア媒介的な伝承・創生〉とアイデンティティ再生の研究
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16K02345
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
加藤 晴明 中京大学, 現代社会学部, 教授 (10177462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久万田 晋 沖縄県立芸術大学, 付置研究所, 教授 (30215024)
川田 牧人 成城大学, 文芸学部, 教授 (30260110)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 奄美文化 / 島唄 / 新民謡 / 余興文化 / 地域メディア / 伝統芸能 / 音楽メディア産業 / 郷友会 |
Outline of Annual Research Achievements |
①うた文化、余興文化、芸能について、メンバーそれぞれが必要に応じて、奄美・東京・大阪などの奄美関係のイベントや文化の担い手への取材を行ってきた。とりわけ昨今では観光や奄美アイデンティティをめぐって奄美からの情報発信が盛んであるので、そうした奄美を発信する文化イベントは極力取材するようにしてきた。 ②奄美のうた関係者への取材は、奄美大島だけでなく、徳之島、沖永良部島、与論島まで広げて実施してきた。沖永良部島・与論島は、ほぼ全ての唄関係者への第一次の取材を終えることができた。奄美大島・徳之島はまだ多くの対象者が残っている。新民謡については、取材により、グループの存在や歴史的変遷についてかなり解明することができた。ただ、いずれも詳細な整理が残されている。 ③奄美のうた文化の継承と発展については、その一部の成果を『奄美文化の近現代史~生成・発展の地域メディア学~』にまとめることができた。とりわけ、唄・音楽イベントと深い関係のある〈文化媒介者〉であるあまみエフエムについては詳細な研究をまとめた。また、島唄・新民謡・奄美ポップスをめぐる奄美関係の音楽産業についても、詳細な論考にまとめた。また、島唄文化については、龍郷町で開設された「奄美・龍郷 島ミュージアム」の島唄パネルの執筆を担当し、研究成果を地元に還元した。 ④社会調査実習の学生を指導して、録音メディア化された奄美の歌文化を対象に、歌詞分析も進めてきた。そうした中で、最近の奄美の歌謡が、アイデンティティ・ソングの側面を強くもっていることも明らかにした。 ⑤研究者の交流のため、研究代表者の加藤晴明が、沖縄の分担者の久万田と東京の分担者である川田を訪ねて研究実施や研究内容に関するミィーティングを重ねている。川田は、奄美の余興文化イベントを取材したり、島の余興イベントの担い手への取材を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①全体の進捗状況は、順調である。うた文化研究や芸能研究は、これまでの比較的長い研究の継承しているので、その継承を基盤により網羅的かつ詳細な研究が進んでいる。余興文化については、各種の余興文化イベントや担い手への取材を開始し、現状と研究対象がより明確になりつつある。 ②うた文化については、奄美群島全域(奄美大島・徳之島・沖永良部島・与論島)まで調査を広げることができた。これは次年度に予定して調査事項であるので、研究の進捗が予定より早く進んでいる。それにより、群島の文化は各島の間での差異をかなり明確に認識することができた。また、群島内で、島唄・新民謡文化の担い手については、対象者の全体を把握することができた。対象者への取材も逐次進めている。奄美ポップスについては、まだ調査がスタートした段階で、全容の把握には至っていない。 ③本研究では文化の〈メディア媒介的展開〉について、唄文化などのイベントのリスト化は、記事素材(南海日日新聞)は集めることができた。そこからピックアップしてのリスト化はこれからの課題である。島の既存マスメディアのうち、ケーブルテレビとラジオについては、イベントや番組プログラムのリスト化はほぼ完成している。具体的な内容分析をどこまで進めるかの検討作業は未着である。 ④本研究では、メディア概念の拡張して多様な文化活動の実践をメディアとして捉える視点を提起してきたが、その一翼である、公民館講座ついては、群島全部の公民館の講座・4年分の受講者の一覧表を作成することができた。文化の裾野にあたる人々の文化活動、とりわけ奄美ポップスなどの現代的な文化については、一部の代表的に担い手への取材が始まったばかりである。 ⑤研究は、それぞれのテーマにも基づいて3名の研究者が個々に現地入りしているが、代表者がそれぞれの分担者と研究交流してそれぞれの研究調整や進展を図っている。
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Strategy for Future Research Activity |
①今後の研究は、当初の予定どおりである。研究代表者が担う、うた文化については群島全域への調査が予定より早く進んでいるので、今後は奄美大島・徳之島の残された文化媒介者への取材を進めていく。 ②うた文化の取材は、島唄の代表的な唄者・教室への取材が数名残されているので取材を進める。新民謡については、長時間の取材素材を整理、時系列にまとめていく。奄美ポップスは、一番研究が進んでいない領域なので、活躍しているアーティストへの取材を進める。同時に、島唄・新民謡・奄美ポップスの歴史を網羅した「メディアと文化史」の精緻化を進める。すでに簡単な歴史は、『奄美文化の近現代史』の資料「奄美の文化・メディア年表」(339-345頁)として刊行したが、それをよく精緻化した定番の表を作成する。 ③余興文化は、概要の把握が終わったので、今後、過去のイベントの収録記録の収集の分析を進める。また、イベントや余興の担い手への取材を進める予定である。この部分での成果発表は、平成29年末か平成30年度になる予定である。 ④出版については、まず「島唄の近現代史」「新民謡の近現代史」をまとめ大学紀要の形で刊行する予定である。奄美大島の文化の担い手は、その中で整理する。徳之島と沖永良部島・与論島はそれぞれ独立した論考として整理する予定である。一連の成果は、2017年3月に出版した『奄美文化の近現代史~生成・発展の地域メディア学~』の次作である『奄美うた文化の近現代史~生成・発展の文化メディア学~』の原稿となる。平成29年度中の素原稿の執筆を計画している。 ⑤研究の交流については、代表者の加藤が、分担者のいる沖縄・東京を訪ねて、研究の交流調整を進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者の出張が次年度に繰り越しとなってしまったことが第一の理由である。研究分担者は長年、沖縄・奄美の芸能研究に専念してきており、内部資料が多く、今年度は内部資料の整理に専念したため、長期の現地調査は次年度に繰り越すこととなった。 短期の出張計画はあったが、台風により中止となった。 次年度は、3年間の研究期間の中の年であり、現地調査の充実を図る必要がある。このため、より詳細な現地調査が必要となる。そのためまとめて現地調査を実施することとしたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由に述べたように、充実した現地調査を実施するため、次年度の予算と併せて、旅費に充当して使用する。滞在費の日数の増加、また調査回数の増加に対応する。
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Research Products
(5 results)