2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K02356
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Research Institution | The National Museum of Modern Art, Tokyo |
Principal Investigator |
冨田 美香 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 主任研究員 (30330004)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フィルムアーカイブ / 映画アーカイブ / 70ミリ映画 / 大型映画 / 映画史 / 映画学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本国内ではほぼ実見不可能となってしまった70ミリ映画とその文化について、最適な保存と上映、復元方法を明らかにし、日本における70ミリ映画文化の永続的な保存と再現を可能とするアーカイブの基礎を築くことにある。具体的には、70ミリ日本映画4作に対象を絞り、1)それらのネガおよびポジ・フィルムの所在と状態、2)70ミリ映画フィルムと映画文化の様態、3)欧米での70ミリ映画フィルムの保存と上映の現状、4)国内での70ミリ映画フィルムの最適な保存方法、上映環境、復元方法、の4点を明らかにしたうえで、最終的には70ミリ映画の国内上映を可能とし、媒体固有の芸術表現の再現を取り戻すことにある。 本年度の計画では、上記1)については、①大映の『釈迦』『秦・始皇帝』の状態調査、②『デルス・ウザーラ』の調査、③『太平洋戦争と姫ゆり部隊』のフィルム所蔵先調査を、2)についてはこれら4作品に関する文献調査を、3)については、①70ミリ現像が可能なハリウッドの現像所やシアトルシネラマ等視察調査・情報収集、②オスロ70ミリ映画祭の視察・情報収集を、そして4)については①フィルムセンター所蔵70ミリフィルムのリストアップ、②不足機器等のリストアップ、③70ミリ上映の可能性のある国内施設調査、を予定していた。 然しながらオスロ映画祭が2017年秋開催となった為、研究効率を図るべく3)の海外調査を次年度以降に回して、研究協力者の協力を得て、上記4)を集中的に行った。その結果、4)については翌年度分の研究計画までほぼ終える成果をあげ、70ミリ映画の国内上映を可能とする道筋をたてることができた。上記1)および2)についても、1)の③はまだ所蔵先が不明だが、その他の課題はおおむね計画通り進捗している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調に進展している」と自己評価した理由は、前項で記したように、研究目的の3)は次年度以降の課題に回したが、4)については、本年度の計画していた①フィルムセンター所蔵70ミリフィルムのリストアップ、②不足機器等のリストアップ、③70ミリ上映の可能性のある国内施設調査を終え、更に2年目の計画としていた①70ミリ映画の上映・検査に必要な機器等の収集・購入、②収蔵70ミリフィルムの状態検査、をほぼ終えることができたからである。また、この進捗状況に伴って、70ミリ映画の試写まで実施することができ、その結果、70ミリ映画のうち、Todd-AO方式、MGM Camera 6、Super Panavision 70、Panavision 70、Super Panavisionといったシステムの作品は、プリント状態が良好であれば、フィルムセンターでの上映が可能であることも確認できた。70ミリ映画の上映は、当初は3年目もしくは研究終了後に実施する計画であったが、現時点でその目途が立ったことは大きな成果と言える。 尚、上記の成果を受け、より具体的な調査・情報収集を、3)の①70ミリ現像が可能なハリウッドの現像所やシアトルシネラマ等視察調査・情報収集、②オスロ70ミリ映画祭の視察・情報収集を、2017年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は、2017年度に、70ミリ映画上映をフィルムセンターで実施し、上記3)の海外調査・情報収集を集中的に行う予定である。特に海外調査・情報収集では、収蔵庫での保管方法や映写機・各機材に加え、それぞれのプリント状態やビンテージ・プリントの取り扱いなどの情報収集が、今後のアーカイブ活動にむけて必要である。 また、近年海外で行われた70ミリ映画の4Kや8Kのデジタル復元や、近年アメリカで製作されている70ミリ映画の状況もふまえ、より良い復元方法の調査を進め、『釈迦』(1961、大映、三隅研次)や『秦・始皇帝』(1962、大映、田中重雄)の復元の可能性について検討を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最大の理由は、海外調査を次年度以降に回したことにあり、また、収蔵フィルムの調査や検査、必要備品の調達・購入を所属機関の経費で行えたことも大きな理由である。さらに、文献調査は出張費を使わずに済み、文献購入も前年度の申請時に行っていたため、費用は発生しなかった。したがって、70ミリ映画の試写実施にかかった費用のみが本年度執行した予算となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度実施しなかった海外調査は、本年度実施する予定である。具体的には、オスロの70ミリ映画祭が8月25日から9月3日まで開催されるため、オスロ映画祭への調査出張に加え、日程的に可能であれば、70ミリのビンテージ・プリントを所蔵しているスウェーデン映画協会、70ミリ映画特集をDCPで昨年度開催したミュンヘン映画博物館、そして70ミリの常設映画館でもあるイギリスのプリンス・チャールズ劇場などにも、まとめて調査を行いたいと考えている。 また、本年度は所属機関での70ミリ映画の上映会を計画しているため、その際にかかる準備費や上映権料等も執行する予定である。
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