2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02363
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
袴田 光康 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (90552729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堂野前 彰子 (岡本彰子) 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (50588770)
金 孝珍 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (20638986)
金 任仲 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (30599577)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 平安文学 / 和歌 / 庭園 / 寝殿造 / 歌合 / 国風文化 / 名所 / 州浜 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、庭園に関する和歌のデータベースを作成するために、『国歌大観』を用いた語彙検索と入力作業を中心に研究を進めた。調査の対象としたのは、「庭(には)」・「池(いけ)」・「州浜(すはま)」・「蓬莱(ほうらい)」・「中島(なかしま)」・「立石(たていし)」・「遣水(やりみす)」等の庭園関連の用語であり、300件以上のデータが得られた。これらのデータを、まず、「歌合」におけるデータとそれ以外のものに分類し、その上で「歌合」の用例における和歌と「州浜」との関連、また名所(地名)や植物(景物)との関連を精査した。その結果、「州浜」を用いた歌合の中でも、特に天徳内裏歌合以前の歌合において名所を詠み込む傾向が顕著に見られることが判明した。「民部卿行平歌合」では「州浜」に「山里」と「荒れたる宿」の風景が造形され、それを「音羽の山」・「てくらの山」・「しのべの森」・「布留の都」・「箱根の山」・「片岡の朝の原」等の各地の名所に見立てて和歌が詠まれている。更に、「寛平御時内裏菊合」では、「山崎の水無瀬」・「嵯峨の大沢の池」・「紫野」・「大堰の戸無瀬」・「津の国の田蓑の島」・「奈良の佐保川」・「和泉の深日の浦」・「紀の国の吹上の浜」・「伊勢の網代の浜」・「逢坂の関」などの名所が「州浜」に再現され、それを題材として名所を詠みこんだ和歌が作られている。「州浜」が名所のイメージを喚起させる「歌合」のための装置であり、その名所のイメージを受けて和歌が詠まれるという相互の密接した関係が明らかになってきた。今後は、名所と庭園の関係について和歌のデータを用いて分析を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度より庭園に関連する和歌の検索作業を進め、300以上のデータを検出してきたが、それらの集められたデータを実際にどのように分類するか、あるいは庭園や名所との関連を明らかにするにはそのデータをどのように用いるべきか、システム構築の前提の部分において時間を要したことが、進捗の遅れを齎した大きな要因である。これらの問題を考慮した上で、データベースとその検索システムを構築しようとしたが、本文の該当範囲やデータの文字数の設定を何度か変更するなどの試行錯誤が続き、当初に予定していたホームページでの公開には至っていないのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
和歌に関するデータは既に揃っているので、ネット上での検索が可能なシステムを作ることが目下の近々の課題となっている。和歌・漢詩・物語の3ジャンルを横断するシステムではなく、それぞれのジャンルごとにシステムを作る方針に切り替え、当面は、和歌のジャンルのみのシステムの完成を目指すことにした。システム設計の諸問題については、外部の専門業者に相談をし、夏休み中には完成をさせたい。現在、進めている物語のデータと合わせて、12月にはネット上で公開をする方針である。今年度は最終年度に当たるので、漢詩ジャンルのデータ・ベースは後に回し、和歌と物語のデータベースの構築を最優先させて研究の成果をまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
これは、ホームページ作成に当てるために予定していた費用が、本年度内にホームページを作成するに至らなかったために未使用のまま残ったものである。ホープページ作成のためのデータベースとシステム設計が順調に進まなかったための遅れであるが、検索システムを含むホームページ作成については、業者と相談して、部分的に委託をすることにしたので、本年度の未使用分と次年度予算の一部を合わせて、ホームページ作成の費用として使用する計画である。
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