2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study on the academic environment of Ehime -with a focus on the acceptance of pre-modern literature and culture-
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16K02368
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
田中 尚子 愛媛大学, 法文学部, 教授 (50551016)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 伊予・愛媛 / 学問 / 注釈 / 享受 / 地方と中央 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度に当たる今年度は、本研究課題の一定の着地点を探ると同時に、次なる展開・発展を模索することを心がけた。まず学術論文としては「『清良記』より窺える伊予の学問事情―“日本最古”の農書となった戦国軍記、その学問・注釈的性格―」(古典遺産68 2019.3)、「『呉服文織時代三国志』に表れる都賀庭鐘の歴史認識-室町の学問の継承として見た場合-」(愛文54 2019.3)を発表した。前者では伊予の問題にダイレクトに取り組み、その地における中央のテクストの利用の有り様について論じ、後者では中央の問題、かつ漢籍享受の問題を主軸に据え、中世から近世へと学問が継承される様相を明らかにした。地方と中央をそれぞれ取り上げたこの2本を執筆する過程において、その背後に存在する中央と地方間に存在する学問・文化の差をも検討することを可能にしたかと思う。 尚、後者の論は口頭発表「『呉服文織時代三国志』にみる都賀庭鐘の歴史認識―室町の学問の継承として見た場合―」(日本近世文学会平成30年秋季大会 2018.11)を下敷きにしたもので、学会発表の際の質疑をも踏まえることで、論文の段階ではより掘り下げた内容にすることができた。 本研究課題に取り組む中で、中国以外の異国との接点の重要性が浮上してきた。たとえば『清良記』にはキリシタンに関する叙述が見えるのだが、これはフロイスの『日本史』に記されるキリシタンの動向とも関連すると推測されるのであって、ここから、ヨーロッパとの関係性も視野に入れた上で改めて伊予、ひいては日本の学問事情について考える必要があると考えるに至った。最終年度に大英図書館所蔵の日本文献の調査を行ったのもその考えにもとづいてのことである。その際の調査結果はまだ整理中であり、これから形にしていくつもりだが、これこそが次年度以降、自身が取り組むべき研究課題として位置付けられることとなる。
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Research Products
(3 results)