2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02382
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
惠阪 友紀子 京都精華大学, 人文学部, 講師 (90709099)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 和漢朗詠集 / 古筆切 / 本文享受 / 伝本研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
古筆切などの現物資料、古筆手鑑の影印本などの資料の収集、陽明文庫所蔵の『和漢朗詠集』写本の資料調査を行った。収集した資料について、書写年代、書写形式、書写者などを調査し、これによって資料を分類整理し、本文の分析を進めた。 収集した資料のうち、書写年代が比較的古く、少数ながら同筆資料が確認できる「山井切」がある。これは伝称筆者を鎌倉時代前期の公卿である九条教家とし、詳細な詩題注記のほか、朱点や墨点などが付され、異本の書き入れなどもある点が注目されるものである。「山井切」の名があり、よく知られた断簡ではある一方、同筆のツレ(同じ書物から切り出された断簡)は少なく、教家を伝称筆者とする断簡が複数あることから混同されることもある。そこで、まずは紙質や大きさなどの書誌情報を比較し、同筆断簡の整理を行い、本文の分析をした。その結果、誤写の状況や書入注などのが建長本・鳳来寺旧蔵本・貞和本・龍門文庫本などと近い関係にあることを明らかにした。これらの諸本は、大江匡房の「朗詠江注 」を有するものであり、山井切の書き入れも江注であると考えられる。朗詠江注の異本注記は大江匡房の所持していた本文である可能性が高く、平安時代と鎌倉時代の写本の関係を考える上で欠かせない資料であると考える。 これらの研究結果をまとめ、関西大学国文学会編『国文学』(第104号、119~130頁、2020年3月)に「『和漢朗詠集』山井切と朗詠江注」として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
収集した古筆切の種類が多く、個々の資料の分析は進んでいるが、同筆資料の分類や分類した資料ごとの分析が十分に進められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査である程度の資料収集は行えた。新型コロナウイルスの影響などで文庫などへの実見調査はほぼ実施できないため、新たな資料収集は困難であると考えられる。そのため、今年度はこれまで収集した資料の分析を中心に行い、これまでの成果をまとめていく。
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Causes of Carryover |
国際学会での発表を計画していたが、開催時期が変更になったために参加できず、旅費等が使用できなかった。また、写真撮影費を考えていたが、調査の関係で延期したため使用しなかった。 次年度は、資料複写の費用として使用したいが、新型コロナウィルスの関係で文庫などが閉館しいるため、変更の可能性がある。また、遠方への資料調査も見通せないため、研究期間の延長も考えて使用する。
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