2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K02382
|
Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
惠阪 友紀子 京都精華大学, 国際文化学部, 准教授 (90709099)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 和漢朗詠集 / 古筆切 / 本文享受 / 伝本研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度もコロナ感染の影響で、引き続き閲覧制限や閉館しているところが多く、資料調査が予定通りに進められなかった。そのため、これまでの調査結果を整理することに留まった。 『和漢朗詠集』は上下そろった完本、上下いずれかのみが伝わる零本、切り離されてバラバラになった古筆切(断簡)など、多数の伝本が現存する。そのため、本文異同も複雑で、その整理を試みてきたが、多くの写本や古筆切を調査するにつれ、写本の系統や分類が困難であることは明白になってきた。その大きな要因としては、『古今和歌集』などの勅撰集とは書写態度が異なっていることが考えられる。正確に書き写そうとしていない様子が読み取れる。勅撰集であれば、誤写に因る書き落としはあっても、勝手に和歌を書き足すことはない。しかし、すでに指摘したことではあるが、『和漢朗詠集』には多くの増補詩歌が見られる。これに加えて、漢詩の異同については字形の類似に因るものが多いが、和歌の語句については、初句に異同が少なく、第二句以降に異同が多い点が特徴であると考える。『和漢朗詠集』に収載された和歌の多くは、広く人口に膾炙したものであり、当時の人々は諳んじられたものであった。そのため、書き写したと言うより、初句を見て書写者が暗唱している形で書写したと考えられる。この点が、異同を複雑にし、本文系統が整理できない原因ではないかと考える。 これらの成果については、2022年2月16日~22日までの間、他の二人の研究者とともに「科研費報告研究紹介パネル展&ミニ講座」として、京都精華大学情報館の展示スペースで公開講座とパネル展「最新の研究に触れる―文学・歴史の方法―」を実施した。併せて、これまで収集した古筆切や写本などについて「和漢朗詠集の写本と古筆切」と題した資料展示を開催し、古筆切の特徴とその意義を紹介した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ感染の影響で、昨年度に引き続き、閲覧制限や閉館しているところが多く、資料調査が予定通りに進められなかったためである。 また、対面授業とオンライン授業の混在で、授業準備・評価に多くの時間がかかり、研究に専念する時間が十分に確保できなかったことも大きな原因である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は調査可能な場所も増えてきたので、調査できなかった資料の閲覧と収集に努める。 原本調査ができないものについては、写真資料や影印などで分析を進め、これらの資料では判断できない書き入れや朱筆などについては、今回の研究対象からは除外し、機会を改めて調査をすることとする。
|
Causes of Carryover |
予定していた調査が行えず、旅費や資料複写の費用をしようしなかったため。
|