中世仏教的観点から見た室町物語本文の総合的研究

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K02384
• Research Institution: Doho University
• Principal Investigator: 箕浦 尚美 同朋大学, 文学部, 准教授 (70449362)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 室町物語 / お伽草子 / 経典 / 説話

Outline of Annual Research Achievements

室町物語（お伽草子）は、室町時代を中心とした時期の短編小説を指すが、物語の本筋から外れるほどに、様々な故事因縁や知識を盛り込むという一面を持っており、当時の教養・文化・知識などがちりばめられた貴重な資料と言える。本研究は、当時の知識や思想の基底にある仏教という観点から、書籍や文言の引用について室町物語群を横断的に調査・研究し、室町物語研究の深化を目指すものである。
当初、本研究は前年度までの４年間を予定していたが、研究期間を延長して作業を進め、考察をより深めるべく取り組んだ。ただし、本年度は研究成果の発表には至らなかった。研究実施計画に示した主要な３点の課題については、以下のように取り組んでいる。（１）室町物語の校訂本文・引用句データベースについては、作業は行ってきたものの、それ自体を公開できるレベルに整えることは困難であると判断した。そのため、形を変えて論文として発表するための準備を進めている。（２）仏教的知識・思想を視点とした室町物語本文の研究、（３）室町物語と関連文献（仏書・説話集）の二つに関しては、仏教に関わる用語の使用や経文・説話の引用のような直接的な影響を確認するだけではなく、異類物の作品、夢告、霊験譚などに見られるような、目に見えないものをどのように捉えるかという視点も必要と考え、検討を行っている。これによって、物語と信仰との関係性についての考察を深める。研究期間を延長して研究成果を纏める予定である。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

研究課題についての作業と研究を進めたが、研究成果の発表に至らなかったため。

Strategy for Future Research Activity

作業と研究に継続的に取り組み、研究成果を発表する。仏典の語句の引用については、網羅的なデータベースの形ではなく、各引用句の問題を掘り下げる形に変えて論じる。

Causes of Carryover

世界的な感染症流行により国内外ともにオンライン学会が増え、学会参加や文献調査のための出張旅費が残り、研究支援の学生アルバイトの依頼も困難であったため。研究期間を延長することができたので、その残額を資料費や旅費として有効に使用する。