2018 Fiscal Year Research-status Report
日本統治下の台湾における能楽活動の基礎研究ー資料に基く台湾能楽史の構築をめざして
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16K02385
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
王 冬蘭 帝塚山大学, 経済経営学部, 非常勤講師 (80319920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
惠阪 悟 帝塚山大学, 文学部, 講師 (20708979)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 台湾能舞台 / 大村武 / 近代能楽史の一端 / 台湾における能狂言 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究者が具体的なテーマに絞り、口頭報告や論文にまとめ、社会に発信した。 王冬蘭が「戦前、台湾における能舞台」について第55回藝能史大会で口頭報告し、論文にまとめ、『藝能史研究』2019年7月号に掲載予定である。内容は下記の通りである。台湾は日本の植民地になった間、台北に能舞台が出現した。その能舞台は橋掛り付きで、本格的といえる大きさであった。それは、戦前の台湾における唯一の常設能舞台であり、大村武という喜多流職分が、1924年に作ったものである。本調査は台北にあったこの能舞台について考察し、それを建てた大村武の履歴、能舞台の場所、様式、使われ方等を明らかにするものである。また、現在、台北西門商業圏にある路地に、百年の歴史がある木造の建物がある。それは「大村武」という日本式串焼居酒屋である。本調査、考察により、この串焼居酒屋の店名になっている「大村武」という人物が、能舞台を作った大村武と同一人物であり、現在の「大村武」串焼居酒屋の建物は、戦前、大村武が能舞台を作った旧居の一部であることが明らかになった。 惠阪悟が「近代能楽史の一端―台湾における能狂言―」について、2018年8月31日に開催された「和漢比較文学会海外特別例会」(於台湾大学)で口頭報告し、論文にまとめ、『2018和漢比較文学検討会論文集』(2018年10月、台湾大学日本語文学系刊)に掲載された。内容概要は下記の通りである。日本統治時代の台湾における能楽の様相を知る基本的な資料として、雑誌『能楽』および現地で発行された新聞である『台湾日々新報』から能楽に関する記事を抽出し、その内容を検討することで、「台湾における能狂言受容のはじまり」「謡曲稽古の流派」「謡曲・仕舞の教授者」「能狂言受容の拡大」「台湾における能狂言の特徴的様相」の諸点について概観を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の王冬蘭や分担者の惠阪悟は、前年度の引き続き、台湾における能楽の展開史、能舞台等について調査し、論文にまとめ、口頭報告や論文発表したが、関係資料の多くが台湾現地に保存され、資料の量がかなり多く、それぞれの収集、整理、確認をするのに膨大な時間がかかった為。
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Strategy for Future Research Activity |
当時の文献資料調査や現地調査で直接手に入れた資料を基づき、戦前、台湾における能楽界の形成、各流(主に観世流、喜多流、宝生流)の活動、全体的な発展状況、つまり戦前台湾能楽史の概ねを明らかにすることが目標である。この目標を達成するために努力したが、未完成の課題がいくつかがある。今後の推進方策として、調査途中のいくつかの課題を深く調査、考察し研究成果を社会に発信する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として以下が挙げられる。 1、資料開拓が思うように進まず場合があり、また基本となる資料の確認に時間を要したことがある。2、代表者の王冬蘭が昨年度分担者として担当した研究テーマも台湾関連であるので、費用節約のため、二つの研究テーマ関連資料を合わせて収集し、出張回数を予定より減らした。3、台湾現地の宿泊事情について少しずつ理解を深められ、安価且つ安全なホテルを見つけれるようになり、予定より宿泊費を節約した。 使用計画として、この研究における何点かの課題研究は未完成の途中段階であり、引き続き調査、確認、研究成果報告に使用することを計画する。具体的な使用計画として、以下を挙げる。1、日本国内資料調査、確認、および台湾現地資料及び場所調査、確認。2、現在着手しているテーマの内容にから、台北以外の場所、例えば戦前観世流が活躍した高雄、台南への調査を予定。3、新しく発見される関連資料を購入、複製。4,研究成果を国内や国外学会で報告する。5,母語は日本語ではない研究者である王冬蘭の日本語論文添削費用。
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Research Products
(4 results)