2020 Fiscal Year Research-status Report
説話の生成に関する研究-貴族・寺院社会における記録の作成・管理との関連を中心に-
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16K02386
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
佐藤 愛弓 大谷大学, 文学部, 准教授 (50460655)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 寺院資料調査 / 説話 / 文庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
中世の貴族・寺院社会において説話は独立して存在した訳ではなく、日記・儀式書・聞書・言談など、多様な資料群の中にあった。本研究は、そのような資料群の構成を明らかにすることによって、その内に位置づけられる説話の機能を考えようとするものである。よって寺院資料調査を基盤とするが、基本的に、資料群の生成や管理の方法については、寺院社会と貴族社会に共通するものがあると考える。すなわち本研究は、貴族・寺院社会に共通する資料群の体系の中で、説話の生成・変遷・保管がどのように行われてきたかを、総合的にとらえることを目的とする。 (1)まず、これまで継続的に行ってきた寺院資料調査についてであるが、2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で、勧修寺聖教文書調査、東寺観智院金剛蔵調査ともに中止となり、行うことができなかった。また仁和寺塔中蔵調査においても、所蔵先のご意向により6月から10月までの調査は中止となり、遂行できたのは計画の3分の1にとどまった。調査中止の間、書誌データの整理や写真データの解析につとめたが、全体として研究の遂行の遅れは避けられない状況となった。 (2)具体的な説話を挙げて、その環境との関係を分析することについても、資料調査中止の影響は大きく、研究史の整理や資料の収集などいくつかの論文の準備を進めたものの、完成には至らなかった。 (3)そのようななか、(1)と(2)を統合する論理については、(1)において、これまでの研究成果により文庫の構造がわかってきたことと、(2)において、説話の生成と社会の関係についてのモデルケースをピックアップできていることにより、考察を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで順調に資料調査を重ねて研究成果を挙げてきたが、2020年度は、新型コロナウイルス感染症予防の観点から、多くの施設で調査ができず、また他の地域での資料展示の見学や、研究会の参加なども不可能であった。よって研究の延長を申し出たが、2021年度も新型コロナウイルス感染症の状況は改善せず、予定している調査ができるかどうかは不透明である。また、代表者の居住地、勤務先ともに、緊急事態宣言下にあり、他の地域に移動しての見学や研究会参加もはばかられる状態にある。本研究の総括を予定していた年に、十分に調査・研究ができない状況となり、研究遂行への影響は不可避である。
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Strategy for Future Research Activity |
寺院資料調査を基盤とする本研究の遂行において、新型コロナウイルス感染症予防の観点から調査ができないことは大きな痛手である。2020年度は、調査の再開を待つ方針で、延長申請をしたが、2021年度も新型コロナウイルスの影響は続いており、調査の再開ばかりを待っていては、本研究の総括ができない可能性がある。 そこで、2021年度は、調査再開時の準備を進めつつ、一方で調査が再開されなかった場合の方策も用意することとする。具体的には、既に撮影してある資料の写真を活用しこれを翻刻したり、すでにデータ化してある書誌データを分析したり、また、すでに目録が完成している他の文庫における研究を参照することによって、新型コロナウイルス感染症の影響によってできなかった調査分を補おうとするものであり、現在その推進のための準備を進めている。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、調査や学会、研究会が中止となり、旅費を使って出張をすることができなかったため次年度使用額が生じた。しかし2021年度も新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、出張が可能かどうかは不透明である。よって次年度使用額は、調査と研究の総括に必要な物品を購入する計画である。
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