2021 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the generation of Setsuwa literature : Focusing on the relationship with the creation and management of records in aristocratic and temple societies
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16K02386
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
佐藤 愛弓 大谷大学, 文学部, 准教授 (50460655)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 寺院資料調査 / 説話 / 文庫 / 『扶桑略記』 / 史書 / 他国観 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、2020年度に新型コロナウイルス感染症の拡大により、資料調査が十分に行えなかったことから、期間延長を申請し研究を継続することとなった。具体的には、当初の計画に従い、以下の3点について研究を進めた。 (1)まず、これまで継続的に行ってきた寺院資料調査についてであるが、前年に引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により調査回数は十分に確保できなかった。ただし、調査の中止がある程度予想されていたため、作業内容や作業工程の順番を変えるなどの工夫で対処することができた。したがって調査回数は限られてしまったものの、すでにとってある書誌データの整理や写真データの解析を中心にすることによって、研究そのものの遂行は確保できたといえる。 (2)また具体的な説話を挙げて、その環境との関係を分析することについては、次の2本の論文を刊行することができた。①「『扶桑略記』の史的意義」(2021年8月)は、2018年に執筆を進めていたものであるが、刊行にあたりあらためて全体を書き直した。さまざまな角度から『扶桑略記』本文を分析し、僧侶、貴族に共通する史書編纂の技術が存在し、それによってこの書が編纂されていることを明らかにした。②「『扶桑略記』の他国観」(2022年3月)においては、『扶桑略記』が自国史だけではなく、他国との交渉記事においても豊富な逸話をもっていることから、その他国観について考察した。仏教を通じた交流だけでなく、多くの文物の輸入など、現実的な記事が多く採用されており、『扶桑略記』における国家像が決して孤立的ではなかったことが判明した。以上の2本にから、説話によって歴史像が描かれる時のシステムが明らかになった。 (3)(1)と(2)を統合する論理についても考察を進めることができた。まだ事例の補完が必要であるが、さらに発展させていくこととする。
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Research Products
(2 results)