2016 Fiscal Year Research-status Report
中世顕密寺院における役行者伝の包摂と正統化についての研究
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16K02389
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
川崎 剛志 就実大学, 人文科学部, 教授 (70281524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仁木 夏実 明石工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40367925)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 役行者 / 顕密寺院 / 箕面寺 / 縁起 |
Outline of Annual Research Achievements |
中世における役行者伝の正統化という汎宗派的現象を、それを撰述あるいは所持した顕密寺院の活動に照らして解明、評価するという目的を達成すべく研究を始め、3年計画の初年度をおえた。初年度は、役行者の伝記、特に役行者が夢中で密教の灌頂を受けたと説く『箕面寺縁起』(承安三年1173以前撰述)の基礎研究に重点をおくと同時に、この研究成果を国際的な議論の場で報告し議論するための準備を進めた。 まず、『箕面寺縁起』の基礎研究については、宮内庁書陵部蔵の原本に基づいて本文を確定し、可能な限り精確に句読点を打つところまで達したが、その成果は注釈作業をおえた後に一括して公表する予定である。また、かつて英語で公表した『箕面寺縁起』に関する概括的な論考(JJRS42-1、平成27年)の内容を見直し、日本語で公表した(就実表現文化11、平成29年)。これによって、日本文学、歴史学、宗教学等の学界で、『箕面寺縁起』に関する基礎的な情報と評価を共有できるようになり、国内における研究展開の足場を固めた。 次に、国際的な議論の場での報告と議論については、日米の研究者を中心に、複数の研究領域から多角的に修験道研究のありようを見直す国際研究集会「REPOSITIONING SHUGENDO -LITERATURE,HISTORY, ART, AND NETWORKS-」(平成29年6月19-20日、カリフォルニア大学サンタバーバラ校)を共催する準備を進めてきた。研究代表者が日本側のコーディネーターを務めるとともに、研究代表者・分担者がそれぞれ『箕面寺縁起』について報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『箕面寺縁起』に関する研究は当初の計画通り進展しているが、関連する役行者の伝記や図像の研究は予定よりもやや遅れている。また、平成29年度の国際学会・研究集会などでの成果発表については、当初の案と異なるが、当初の案よりも充実した報告と議論の場を確保できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度、30年度も、当初の予定通り研究を推進する予定である。主な実施計画は次の3点である。1『箕面寺縁起』の訓読と注釈、2仁和寺御室の関与に関する調査・研究、3鎌倉時代の役行者の伝記と図像の相関の解明。平成29年6月の国際研究集会での議論を踏まえて、海外の研究者を含めて、多くの研究者の共有できる厳密な基礎資料を提供するととともに、寺社縁起という書物の撰述と受容を通して、修験・修験道のもつ意味と歴史が生み出された事実を提示すべく研究を進める。
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Causes of Carryover |
次年度に米国で国際研究集会を共催することがほぼ確定した時点で、研究代表者・分担者のに加えて、宗教学・歴史学・美術史学の分野の修験道研究の第一人者を1名ずつ報告者として招聘する計画を立てた。その旅費の一部を捻出するため本年度の支出を抑えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に上記計画を実現するため使用する。
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Research Products
(1 results)