2016 Fiscal Year Research-status Report
16・17世紀における物語草子制作と仮名法語の開版の相関性についての研究
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16K02392
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
恋田 知子 国文学研究資料館, 研究部, 助教 (50516995)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 物語草子 / 仮名法語 / 絵巻 / 奈良絵本 / 出版 / 比丘尼御所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで申請者が研究課題として対象としてきた「比丘尼御所」を中心とした尼寺の文芸文化についての研究の延長上にあり、中世後期から近世前期にかけての寺院圏と貴族圏との間における書物による交流の実態解明から分析を試みるものである。具体的には、貴族圏伝来の仮名法語、および寺院を経て生成・享受された物語草子、そして両者の相互連関の具体相について調査・分析をおこない、そのような相互交流をもたらした場について再検討するものである。それにより、尼寺の文芸文化を相対化することを目指している。 今年度は初年度ということもあり、まずは上記の課題について、これまで明らかとしてきた点とさらに追求が必要な点を明確にし、今後の課題を整理した上で、調査着手のための下準備に努めた。すなわち、具体的な事例から、物語草子と仮名法語とがいわば同列にみなされ、相互に関連しつつ変容・享受されていた様相を導き出しており、書物を通した寺院圏と貴族圏との交流実態の一端を明らかとした。そして、それは比丘尼御所文化圏での文芸営為と同じ位相にあり、尼寺の文芸文化を相対化する事例ととらえられ、そのような事例をさらに蓄積することが必要である。 上記の内容を具体的な事例とともにまとめ、2017年3月にハイデルベルク大学で開催された国際ワークショップ「写本と版本」(慶應義塾大学・ハイデルベルク大学共催)で、「江戸初期における仮名法語の開版と物語草子」と題した口頭発表をおこない、多くの貴重な示教を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は調査予定先の事情などもあり、具体的な調査は計画時のようには進まなかったものの、本研究の課題に適った国際ワークショップで口頭発表の機会をいただいたことで、問題点が明確となり、新知見も得られ、本研究遂行のための一助となった。
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Strategy for Future Research Activity |
調査対象の拡充をはかることで、円滑かつ柔軟に対応していきたい。
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Causes of Carryover |
ワークショップの開催が年度末であったこともあり、金額の確定がなかなかできなかったことや、調査先の事情で調査予定の取りやめなどもあったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査先の拡充をはかり、調査先の事情に左右されることのないよう、臨機応変に対応していきたい。
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