2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02404
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 康二 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90269647)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 本居宣長 / 富士谷御杖 / 言霊倒語説 / 表裏境説 / 表現論 / 解釈学 / 宣長問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
五年計画の二年目にあたる29年度は、ポスト本居宣長の一人である富士谷御杖について、考察したことを論文に発表した。鈴木健一編『江戸の学問と文藝世界』(森話社、平成30年2月)に収録された「言霊倒語説の形成―表現論から解釈学へ」がそれである。御杖の「言霊倒語説」は、心を言葉にすると災いが生じるという言霊信仰を表現論に応用した学説で、和歌や物語の表現として構築された説である。それが和歌や物語を解釈するために編み出された「表裏境」説に発展的に融合し、独自の解釈学を構築する過程について、御杖の履歴を背景にして考察した。 また、宣長の国学がはらむ問題(いわゆる「宣長問題」)について、佐伯孝弘他編『古典文学の常識を疑う』(笠間書院、平成29年5月)の中に「国学における実証性と精神性」と題して検討した。宣長の国学は客観的・科学的で緻密な実証主義と主観的・神懸かり的で粗雑な自国中心主義が混在する複雑な構造を有している。これについて、前近代としての近世の「知」が持つ矛盾あるいは逆説という観点から論じた。 その他に、宣長の「をかし・おかし別語説」に関する口頭発表、宣長の現代的価値についての口頭発表、「面従腹背―村田春海」と題して発表をおこなった。これらの発表は、ポスト宣長という観点をより明確にするために、本居宣長そのものに立ち返って、その特徴を追究したものや、宣長と同時代の相弟子である真淵門弟の村田春海との関係を追究することにより、次世代の宣長観を先取りするさまをあぶり出した発表である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の後半は、所属先の変更という不測の事態もあり、新たなテーマのためのパイロット調査が十分にできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は橘守部・平田篤胤・萩原広道について、それぞれの特徴をポスト宣長という観点から、それぞれ追究し、論じる予定である。
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