2016 Fiscal Year Research-status Report
薄田泣菫文庫の全容解明に向けての総合的研究―明治・大正文壇の思想的水脈として―
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16K02407
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西山 康一 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (40448212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 宏行 青山学院大学, 文学部, 教授 (60233756)
竹本 寛秋 鹿児島県立短期大学, その他部局等, 准教授 (20552144)
掛野 剛史 埼玉学園大学, 人間学部, 准教授 (00453465)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 薄田泣菫 / 倉敷 / 書簡 / 原稿 / 近代詩 / メディア研究 / 日本近代 / 文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(平成28年度)は7月30~31日、10月8~9日、3月28~29日の3回、現地倉敷での資料調査とともに、倉敷市文化振興課や薄田泣菫顕彰会も交えての全体的な会合を持ち、本研究課題における各自の調査研究の進捗状況や今後の計画について報告・検討した(もちろん、それ以外にも本研究メンバー各自が独自に調査のため倉敷市に訪れてもいる)。 具体的には、倉敷市蔵の薄田泣菫旧蔵資料(以下、泣菫文庫と呼ぶ)の調査研究が本研究の主要目的であるが、特に本年度はまず『倉敷市蔵 薄田泣菫宛書簡集』全3巻(倉敷市編、八木書店、2014.3~2016.3)にも収録されなかった、泣菫文庫の新出書簡資料の調査・整理(目録作り)ということを、その第1の目標として設定していた。それに関しては目録整備も終わり、一定の達成を見たといえる。そして、本年度できれば取り組みたい第2の目標=書簡資料以外の原稿・日記・メモ類の調査研究ということに関しては、とりあえずそれらの資料の確認・写真撮影を終え、研究の基盤を作ったところであり、現在本研究メンバー各自がそれらの資料の検討に取り掛かりつつある状況である。 以上のように、本年度は本研究のための基盤づくりを中心に取り組んできた。これ以外にも、次年度に向けた活動として、今後研究成果を公開していくにあたり、最終的にそれらの調査研究の成果を集約的に報告するためのものとして、薄田泣菫に関する資料集か読本のようなものを、倉敷市と協力して発行するという計画を現在協議しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で記したように、本年度(平成28年度)については、本研究の基盤整備期間として当初から位置づけていた。すなわち、①第1の達成目標として泣菫文庫の新出書簡資料の調査・整理、②できれば行いたい第2の目標として、書簡資料以外の原稿・日記・メモ類の調査研究ということを掲げていた。①については上記のように既に目録の整備も終わって順調に進んでおり、②についても資料の確認・写真撮影を終え、現在それらを使って各資料の検討に入っている。つまり、実際に研究基盤の整備は進んでおり、今年度の研究実績は着実に積まれてきたといえる。 確かに、本年度は以上のように研究の基盤づくりを中心に行なってきたため、研究成果として公開したものは、基本的には下記の研究論文1本に止まった(それ以外にもホームページ上の報告が若干あるにしろ)。しかし、そもそも本年度の目標の中心は研究に必要な基盤づくりであり、また「研究実績の概要」でも記したように、今後の研究成果の公開方法についても現在計画を立てて話を進めているので、その意味でもおおむね順調に研究は進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(平成28年度)の活動を踏まえ、2年目以降は出来上がった研究基盤を利用して研究を深めていきたい。具体的には、既に撮影し終わった写真映像を使って、泣菫文庫に残る原稿や書簡、日記、メモといった資料の分析を行っていきたい。 これらの資料は薄田泣菫自身のものだけでなく、芥川龍之介、与謝野鉄幹・晶子、坪内逍遥、有島武郎、武者小路実篤など、著名な作家や文化人のものが多く、特に原稿・書簡・メモ類は泣菫文庫に手つかずのまま残っている。それらの資料はこうした作家・文化人の作品や思想の成立過程が窺える場であり、それらの検討を通じて本研究課題の副題にも掲げるように、明治・大正期文壇の思想的水脈、すなわち泣菫と同年代あるいは後輩にあたる作家・文化人たちとの〈知〉の交流についてあとづけていきたいと考えている。 そして、本年度は研究の基盤づくりが中心となったが、だんだんと研究成果の公開のほうへ今後はシフトしていく予定である。特に最終年度には上記したように、これまでの研究成果をまとめるような形で、泣菫文庫の資料を使った薄田泣菫に関する資料集(読本)のようなものを、倉敷市と協力して完成させることを予定している。
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Causes of Carryover |
本研究メンバーの一人が本年度途中から体調を崩したこともあり、旅費が予想していたよりもかからないこととなった。 また、本年度の第一目標は研究の基盤整備ということだったが、さらに研究が進んだ時には高額な研究書籍や資料の購入の必要があるかと思い、本年度分を少し多めに見積もっておいた。が、研究の基盤整備以上に、そこまで研究が進まなかったことや、あるいは高額な書籍・資料を購入するには中途半端な金額だけしか残っていなかったため、今回はそれらの購入を見送り、結果次年度資料額が生じることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は研究の深化・成果の公開、といったところに作業の中心をシフトしていくため、高額な研究書籍や資料の購入が見込まれる。また、旅費や人件費なども、次年度はより調査研究を充実させ、その成果の公開を目指していく必要から利用が増えると思われるので、そこに使用していきたいと計画しいる。
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Research Products
(3 results)