2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K02418
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
近衞 典子 駒澤大学, 文学部, 教授 (20178297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清登 典子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60177954)
大石 房子 (金田房子) 清泉女子大学, 付置研究所, 客員所員 (80746462)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 上田秋成 / 俳諧 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は2年目に当たり、秋成句の分析的研究を継続する一方、これまでの成果を外部に発信、また秋成句につき情報交換するなど、積極的に研究活動を行った。 まず、科研メンバー全員で2回の研究会を実施した。2回目は駒澤大学の大学院生も参加。2017年5月27日(土)14:00~17:00、および2018年3月15日(木)14:00~17:00、いずれも駒澤大学第一研究館1346室にて、科研の進捗状況の報告や今後の進め方等についての打合せを行なった後、担当者による研究発表と討議を行ない、秋成の俳諧の独自性についての新たな視点を獲得することができた。未見の資料については、その所在等について情報を交換し、今後、引き続き調査を継続することとした。また海外在住の研究協力者とはメール交換を通じて研究の内容を共有した。 次に、研究代表者は京都女子大学(京都府)の秋季公開講座に招聘を受け、2017年10月16日(月)14:45よりJ420教室において、「秋成文藝の魅力―小説・和歌・俳諧―」と題して講演し、その中で現在推進中の科研での研究内容の一部について、具体例を挙げつつ紹介した。国文学研究を志す若い学生や一般の方に発信する貴重な機会を与えていただき、感謝している。講演内容は『女子大国文』第162号(2018年1月発行)に、講演と同じタイトルにて発表した。11月21日(火)には市川市中央公民館(千葉県)で開催された有志主宰の市民講座、市川老壮塾において、秋成の俳諧について科研の研究内容を踏まえ話をした。 また、11月4日・5日に愛媛県松山市立子規記念博物館で開催された第69回俳文学会全国大会において、分担者の一人が秋成と関係の深い与謝蕪村について研究発表した。科研メンバーは全員参加して知見を広め、また秋成俳諧について参加者と意見交換し、作品の所在について新情報を得ることもでき、大変有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始から2年目に当たる2017年度の主な研究活動として当初予定していたのは、科研の各メンバー個人による秋成発句の調査と分析、及びその成果の文章化と共有である。これについては、2回の研究会を通じて、着実に成果を挙げている。 メンバーは研究開始以来、各自が自身の分担句の語釈・通釈を進めているが、秋成の発句に関してはこれまであまり研究の蓄積が無く、その解釈については、ほとんど手探りといってよい状態である。いわゆる蕉風俳諧とは大きく異なる作風を持つため、解釈に難儀することも少なくなく、独りよがりの解釈に陥る危険性も大きい。そこで研究会では互いの成果を持ち寄り、その研究結果の妥当性について議論を重ねてきた。当日は担当者による研究発表に基づいて活発な討議を行ない、より的確な解釈に至るよう努力した。また後日、発表者が改訂を加えた資料をメールで全員に配付することで、注釈の成果を共有した。発句解釈の進捗具合は少々遅めであるが、この発句解釈の議論を通じて、秋成俳諧の特色が浮かび上がってきている。今後の研究における一つの重要な手掛かりを得ることができたので、今後スピードアップして考察していきたい。 ただ、未だ不十分な点もないわけではない。資料の所在について情報が不十分、または所在が判明していても現物に当たれないケースがある。これについては次年度も継続的に追求すべき努力課題である。 これに対して、予定よりも進捗していると言えるのが、研究成果の発信である。上記「研究実績の概要」でも触れたように、研究者以外の一般の方にお話する貴重な機会を思いがけず得ることが出来た。この講演会を通じて、研究会で積み重ねてきた秋成発句の解釈や、芭蕉や宗因の句と比較することによって浮かび上がってくる秋成句の面白さなどを具体的に伝えることができた。 以上のように、本年度の研究はおおむね順調に進展していると言ってよいと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は本科研テーマの研究の最終年度である。3年間の研究の締め括りとして、残る秋成発句の注釈作業を精力的に進めることが最も大きなテーマとなってくる。 これについては、これまで通り各自が個別に研究を進めていくほか、2~3回の研究会を実施、この場で各自の語釈・通釈を検討し、より良い注釈を目指して意見交換し、その結果を集約していく。まずは5月30日(水)に2018年度第1回目の打合せ、及び研究会を予定しており、2名の報告者による成果発表と討議を行う予定である。また、海外の研究協力者の成果についてはメールで送信してもらい、研究会で俎上に挙げ検討することも予定している。そして、これらの研究会における新たなる成果と、昨年度まで積み重ねてきた注釈の成果とを統合し、秋成全発句の注釈をまとめることが、本年度の最も大きな目標となる。これまで、研究の蓄積の少ない秋成の発句解釈に手間取り、思った以上に時間がかかったため、現在、秋成全発句の注釈作業は予定よりも遅れ気味である。今年度はできるだけスピードアップして注釈作業を進め、また研究会のみならずメール等も駆使して意見交換し、研究を精力的に推進していく所存である。 また、今年度は成果の発信も重要な案件である。これについては、現在計画中のいくつかの企画がある。まず、年度末に研究の成果発表を兼ねたシンポジウムを実施する予定であり、現在、テーマを決めてパネラーの候補者に出演を交渉中である。このシンポジウムの際に、併せて3年間の注釈の成果を取りまとめたデータを公表することを考えている。もう1件、国際学会にエントリーすることも計画している。以上の成果の発信に向けて、今年度は各自の成果の取りまとめとデータ整理の作業のためにアルバイトを雇用し、情報の公開に向けて準備をする予定である。 以上のような方策を取ることで、秋成全発句の研究を稔りあるものとしたい。
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Causes of Carryover |
当該年度に計画していた遠方への調査旅行について、相手方のご都合等により実施ができなくなった。そのため、当初予定していたよりも旅費や資料のコピー代金などにおいて支出が少なくなり、残額が発生した。 しかし、これとは別に、2017年度の調査や意見交換により、これまで所在不明であった資料の存在が判明するなど、新たなる資料調査が必要になった。そのため、これらの助成金については2018年度に支出する予定である。
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