2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K02418
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
近衞 典子 駒澤大学, 文学部, 教授 (20178297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清登 典子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60177954)
大石 房子 (金田房子) 清泉女子大学, 付置研究所, 客員所員 (80746462)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 上田秋成 / 俳諧 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は最終年度に当たるため、研究の完遂に向けてこれまでの成果を集約し、さらに残る句の解釈を進めるために研究会を実施した。またこれまでの成果の一部を国際学会で報告した。 第1回研究会は5月30日(水)14:00~17:00、駒澤大学において、研究代表者、研究協力者のほか、大学院生1名も加わり、計4名で実施。各メンバーの進捗状況の報告と、今年度の見通しについて確認し、研究発表会も行った。 第2回研究会は8月21日(火)13:30~17:00、筑波大学において実施。今回は韓国から研究協力者も来日して参加、直接に意見交換することによって有意義な研究会となった。ただ、残された課題も明らかになり、今年度中に研究を終わらせるより、1年間期間を延長してより良い研究を目指す方向性を確認。本年度末に計画していたシンポジウムも、併せて翌年度に延期することを決定した。 第3回研究会は2019年1月28日(月)13:00~17:00、駒澤大学において参加者4名で実施した。研究報告のほか、期間延長した場合の新たなスケジュールを確認、シンポジウムのテーマとメンバーの候補も決定した。 学会報告は2018年12月6日に行った。インドネシア・ジャカルタのル・メリディアン・ホテルで開催されたThe 6th JSA ASEAN CONFERENCE 2018(12/6・7)において、研究代表者が当科研のこれまでの研究成果を踏まえ、「上田秋成俳諧の特色」と題して研究発表を行った。すなわち、従来芭蕉に対して批判的であると評される秋成に、芭蕉句を踏まえた句が複数存在することを例示し、芭蕉句へのアプローチの方法と秋成の芭蕉観の再検討を行った。また、貞門・談林・蕉風の三体を模した秋成作の三句を素材に、秋成における各流派の特徴の把握の仕方についての見解を示した。その後の意見交換も含め、大変有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始3年目にして最終年度の2018年度は、当初の計画では、3年間の成果を集大成し、年度末にシンポジウムを開催して、世に広く研究成果を問う予定であった。当初の計画に従ってメンバーが各自で担当箇所についての研究を深め、年数回の研究会における討議を通じて、これまで着実に成果を挙げてきたと言い得る。 従来、小説や和歌・和文に傾きがちであった秋成研究において、例えば文学全集等において秋成の句が取り上げられることはほとんどなく、研究対象となる句は限定的であり、その文学性が問われることもなかった。近年、やや秋成俳諧についての研究が進んできたとはいえ、俳諧史にいかに秋成の作品を位置付けるかについては未だ手探りの状態にあり、その全容はまだ見えない。 そのような状況の中で、本研究では一句一句を丁寧に検討し解釈を付す、地道な作業を積み重ねてきた。その作業を通じて得られたものは大きく、秋成句の趣向における特徴や独自性などについて、具体的に体得することができた。また、従来唱えられてきた秋成の芭蕉観についても再考の余地があることが明らかとなり、秋成の伝記的事項や交流関係などについても、新たな知見が得られた。その意味では順調に進捗していると言えるであろう。 ただ、秋成の句の詠みぶりは、当時から「ひとり武者」と称されたごとく自在であるが、それゆえに解釈が困難な点も多い。研究会における発表を通じて新たな課題が発見されることも多く、また解釈の再検討を迫られ、次回の研究会で再度検討するケースもあった。小説や雑俳との関係を視野に収める必要性に気付くなど、幅広い検討事項が浮上した。このような事情により、当初予定した通りには研究は進捗しなかった。 そこで、当該年度で完結するよりも、さらに1年間の研究期間延長によって、より正確な注釈を目指す方がよいという結論に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は最終年度であるので、現在までに残された課題に着実に取り組み、秋成の全発句についての注釈を完成させることがもっとも大きな目標であると考えている。また、これまでの3年間にわたる本研究を通じて蓄積してきた成果を集大成し、データとして公表するほか、年度末にはシンポジウムを開催し、本研究で明らかになった問題点や今後の展望、本研究の意義などについて広く研究者と問題意識を共有すべく、機会を設ける予定である。 具体的には、5月18日につくば大学にて開催する予定である第一回研究会を始めとして、年に数回の研究会を組織し、未だ検討していない秋成発句について研究発表・討議を重ねるほか、既に注釈を付した句についての各メンバーの清書原稿を取りまとめて形式の統一を図り、再度チェックして完成度を高めた上で、全発句の注釈を完成させることを目指す。もし可能であれば海外在住の研究協力者にも来日を求め、全メンバーによる直接的な検討・討議をしたいと考えている。研究成果のデータ集約、および清書原稿の取りまとめに当たっては、アルバイトを依頼する予定である。また、年度末には秋成の俳諧をテーマとするシンポジウムを駒澤大学において開催する予定で、具体的な企画を提案し、本科研メンバーによる了承を得ている。シンポジウムにおいては研究代表者が司会を務め、パネラーとして研究分担者の1人のほか、外部より研究者2人を招聘する予定であり、既に両者から内諾を得ている。このシンポジウムにおいては、秋成の小説と俳諧との関連性、あるいは同時代の俳壇との関係など、より視野を広げて新たな視座を得られるよう、積極的な議論を展開したいと考えている。シンポジウムに合わせて、先述した本科研で得られた研究成果のデータを提供する予定である。成果を共有し、内容についての率直な意見交換をすることにより、よりバージョンアップした研究になるはずである。
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Causes of Carryover |
本研究は当初、2018年度末までに終了する予定であり、当該助成金は、2018年度半ばまでに秋成の全発句の注釈を完成させた上で、年度末にシンポジウムを開催する予定で予算化したものであった。しかしながら、前述したように秋成発句の解釈については先行研究がほとんどなく、手探りで研究を進めてきたため、研究は遅れ気味であった。全注釈をするという最も大きな目標を達成するためには、更に1年間をかけて着実に進める必要があると判断し、次年度への延長を選択した。本来、当該助成金が支出されるべき、本科研メンバーが個別にまとめた研究データの集約・整理、およびシンポジウム開催が2018年度中に実施できなかったため、次年度使用額が生じた。 2019年度には、残された課題に精力的に取り組み、全注釈を完成させる予定であり、シンポジウムの企画も既に順調に進んでいる。また、研究会を通じて科研メンバー相互の研究成果の共有とブラッシュアップも着実に進められている。今後は、残された作品の注釈を確実に積み重ね、これまでの研究成果にそれらを合わせた総合的なデータ集約・整理が必要になってくる。当該助成金は、今後の資料収集、データ集約に当たってのアルバイト代金、シンポジウム運営等で使用する予定である。
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[Book] 動物怪談集2018
Author(s)
近衞典子他
Total Pages
432
Publisher
国書刊行会
ISBN
978-4-336-06038-9